奨学金に頼ることになりそうで、心苦しい

息子に大学進学のために
奨学金を利用させることには
心苦しさがあります

3年前に離婚し、現在シングルマザーです。
前夫から養育費は受け取っていませんが、今はフルタイムで働けるので、貯蓄もできています。
しかし、正社員とは言え、地元の中小企業ですから、ボーナスはごくわずかで、今後の昇給もあまり望めないでしょう。
また、2年前にクルマを買い替えたため、貯蓄も減ってしまいました。
息子が希望すれば大学卒業までは教育資金は用意したいと考えていますが、正直、その自信はなく、そうなると、奨学金に頼らざるを得ません。
しかし、何だか息子に申し訳ない気がしてしまうのですが……。

全体の10%が奨学金の返済を
遅延している

プライベートな質問で恐縮ですが、なぜ養育費は受け取られていないのですか?

離婚してから5ヵ月は月3万円振り込んできましたが、それからぷっつりと途絶え、連絡も取れなくなれました。もともといい加減でしたから、私も期待していませんでした。というか、あんな男の養育費など要らないと、今はそんな気持ちです。多少は強がっていますが(笑)

なるほど。ところで、親御さんはご健在ですか?

両親とも70歳近いのですが、元気です。クルマで1時間くらいのところに、兄夫婦といっしょに住んでいます。行き来できる距離ですが、そもそも親の反対を押し切って結婚した手前、あまり甘えることもできず……。それでも、母親はときどき食材などを持って訪ねてきてくれます

ご心配の教育資金ですが、学資保険などにも加入していませんね。

そうなんです。つい入りそびれてしまいまして

奨学金にはどんなイメージがありますか?

返せない人が多いということは聞いたことがあります。子供にとっては、結構負担なのかなあと思うと、親として心苦しいところはあります

わかりました。おっしゃるとおり、奨学金返済の延滞はいまや社会問題になりつつあります。全国で3ヵ月以上延滞している債務者は13万2000人いるという調査結果もあります(※)。まずは、奨学金が本当に必要かどうかを考えてみましょう

相談者プロフィール

F・Aさん

長野県在住

性別
女性
年齢
30歳
職業
会社員

賃貸住宅
家族は長男10歳(小学校5年)の2人。

MONEY DATA

収入

  • 給与21万5000円
  • 児童手当1万円
  • 児童扶養手当1万8000円
  • ボーナス(年間手取り)12万円

月額合計 24万3000円

月間支出

  • 家賃6万7000円
  • 食費4万円
  • 水道光熱費1万2000円
  • 車両費(※1)1万3000円
  • 教育費1万1000円
  • 通信費(※2)1万円
  • 家族のこづかい1万円
  • 交際費・娯楽費1万円
  • 保険料1万円
  • 雑費1万円

合計19万3000円

  • ※1 駐車場代、ガソリン代、保険料など
  • ※2 携帯・スマホ代、プロバイダー料金、有料テレビ代など

貯蓄/運用

  • 通常貯金12万円
  • 定額貯金140万円(毎月5万円積立)

合計 152万円

「できる限り用意する」ことが大事と考えたい

まず、用意できる教育資金を見てみましょう。
F・Aさんの現在の貯蓄ペースがずっと維持されれば、8年後に貯蓄額は600万円に達しています。大学費用(4年間)の平均額は私立文系であれば約400万円ほど、私立理系なら550万円ほどです。また、入学時に全額が必要ではないことも考慮すれば、あくまで数字上は、奨学金に頼らずとも大学費用は用意できるということになります。

また、高校までの教育費も、「高等学校等就学支援金制度」の他、各市町村には母子家庭を対象にした小・中学生の就学支援制度(学用品費、修学旅行費、学校給食費等の補助もしくは免除)があります。高校まで公立であれば、学校教育費はかなり抑えることができるはずです。

しかし、支出は学校にかかるものだけではありません。たとえば、受験や成績アップを目的に学習塾に通うかもしれません。クラブ活動費や食費などの生活費もお子さんの成長に合わせて、徐々に上がるでしょう。また、入学した大学が自宅から通えないとすれば、別途家賃や生活費が発生します。息子さんがアルバイトをしたとしても、ある程度の仕送りは必要になります。

それらを考慮すれば、大学進学をした場合、奨学金を利用する可能性も否定はできません。しかし、F・Aさんがそのことを「心苦しく」思うことは決してないと思います。

もちろん、奨学金については親子での十分な話し合いが必要です。奨学金は子どもの自立心や責任感を養う効果が期待できますが、まとまった額の負債を負うことに変わりはありません。息子さんは、子育てや仕事に頑張る親の姿を見て育っているのならば、できる限り教育費を出してくれたF・Aさんを、息子さんは十分理解してくれるのではないでしょうか。
また、2020年4月から高等教育の修学支援新制度がスタートし、要件を満たせば給付型奨学金が支給され、授業料・入学金の減免を受けることもできます。経済的な理由で進学をあきらめることがないよう文部科学省の情報はしっかりと確認しておきましょう。

今後、必要な支出が増えて、貯蓄ペースは落ちるかもしれません。しかし、家計を見る限り、さほど気になる無駄は見当たりません。貯蓄ペースを維持しようといろいろ無理をして、結果、体を壊しては元も子もないはずです。
F・Aさんが今すべきことは、教育費が足りるかどうかずっと不安に過ごすのではなく、今のまま、できる範囲の教育資金づくりを精一杯することだと思います。

(※)令和2年度/日本学生支援機構「奨学金返還者に関する属性調査結果」

FP相談を終えて。F・Aさんの感想

自分の負い目から不安だけが膨らんでいました

理由は何であれ、親の都合で離婚したことに私自身、何となく息子に負い目を感じ、不自由はさせたくないという気持ちが強くなっていました。
でも、大事なことはできる範囲で頑張ることと言われ、少し気持ちがラクになりました。
できれば地元の国立大にと願っていますが(笑)、どうなるかは今後の楽しみにしたいと思います。

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