FPコラム

日本FP協会が認定するファイナンシャル・プランナーの上級資格をもったCFP®認定者が、くらしとお金に関する社会保障制度や税制の解説から、生活の中で見つけたちょっとしたアイデアまで、みなさまのファイナンシャル・プランニングを考える際のきっかけ作りとなるような情報をファイナンシャル・プランナーの幅広い視野で取り上げ、月1~2回お送りしています。

最新号
2021年10月号(2)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 岩田 由利子

親が認知症になったら相続はどうなる?

 高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)が約3割という超高齢化社会において、高齢の親を持つ世代が直面する問題に、親の心身の健康と財産の管理があります。特に財産の管理については、相続も絡んできますが、親のお金について話し合いをすることにつき、躊躇いもあり先延ばしにしがちです。しかし、何もしないうちに、親が認知症になってしまったらどうでしょう。
 そこで今回は、親の認知症と相続の関係について解説します。

親が認知症になると

 介護保険法では、「認知症は、アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患による後天的な脳の障害により、日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態」と定義しています。つまり、認知症は、日常生活における自分自身の行為を適正に判断できず意思能力を喪失した状態にあるということです。
 民法上、「意思能力を有しない者がした法律行為は無効」としているため、認知症になると、さまざまな法的手続きに不都合が生じることになります。 例えば、預金を引き出す行為も法律行為の一つであるため、介護費用が必要でも金融機関が預金引出に応じない可能性があります。もちろん、子が容易に代理をすることはできません。では、どんな対処をすればよいでしょうか。

法定後見制度を利用する

 法定後見制度とは、成年後見制度の一つで、意思能力を有しない人のために、家庭裁判所から選任された成年後見人等が本人に代わって財産の管理など法律行為を行うことで、本人の保護や支援をする制度です。しかし、子が申し立てをしても必ずしも自分が選任されるとは限りません。また、選任されたとしても、相続対策の目的で財産を勝手に処分することはできません。
 高齢化が進むとともに認知症患者数も増加の一途で、内閣府の調査によると、2025年には5人に1人が認知症になるというデータもあり、今や認知症は私たちの身近な問題であることがわかります。親が認知症になる前に、もしもの場合を見据えて、あらかじめ対応策を準備しておくことが肝要と言えます。
参照:内閣府「平成28年高齢社会白書 第1章第2節3」より

あらかじめ準備できる3つの対応策

(1)任意後見制度を利用する

 任意後見制度とは、誰を任意後見人にするのか、将来何を委任するのかを公正証書による契約で定めておき、意思能力が低下した後に、任意後見人が委任された内容を本人に代わって行うというものです。
 子も任意後見人になれます。財産の管理や処分の内容について任意後見契約を結んでおけば、親が認知症になった後、家庭裁判所に申し立てることで契約に沿った対応ができるので、相続対策の一つとして有効です。

(2)家族信託を利用する

 家族信託とは、財産を持つ親が、財産の管理や処分などを子や親族に信託する仕組みです。信託された側は信託契約後から柔軟に対処することができるため、遺言の代用として相続対策としても活用できますが、信託契約後から亡くなるまでの財産は含まれないことに注意が必要です。

(3)遺言書を作成する

 民法で、遺言できるのは「遺言能力のある人」としており、意思能力を喪失する認知症の場合、遺言書は作れません。しかし、親が心身ともに健康であるうちに手続きをすれば、家族信託に含まれていなかった財産についても網羅できるため、相続をスムーズに進めるという目的においてより安心な対応策です。

まとめ

 以上、相続を含めた親の財産の管理について、認知症になる前後の対応策について解説してきましたが、それぞれに詳細な条件やメリット・デメリットがあります。まずは、親の気持ちを尊重することを第一に、どれがよいのか、又は併用した方がよいのか、自分たち家族にとって適した選択は何かを話し合うことが大切です。そして、法律や税金に関わる難しい面も多いことから、相続に詳しいFPに相談するなど専門家を交えて準備することをお勧めします。

  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフです。本コラムは執筆者個人の見解を掲載したものであり、当協会としての意見・方針等を示すものではありません。

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