FPコラム

日本FP協会が認定するファイナンシャル・プランナーの上級資格をもったCFP®認定者が、くらしとお金に関する社会保障制度や税制の解説から、生活の中で見つけたちょっとしたアイデアまで、みなさまのファイナンシャル・プランニングを考える際のきっかけ作りとなるような情報をファイナンシャル・プランナーの幅広い視野で取り上げ、月1~2回お送りしています。

  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。
最新号
2018年8月号(1)
ライフプラン
CFP®認定者 坂本 綾子

医療費が高額になった時に負担を軽くする制度

 みなさんは何のためにお金を貯めていますか? 貯金の目的として、「病気や不時の災害への備え」は「老後の生活資金」と並んで上位に挙がっています。※
 今回は、病気やケガで高額な医療費がかかった時に負担を軽くする制度を紹介します。
※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)2017年調査結果)より

医療費の自己負担には上限額がある

 病気やケガの治療の際に力を発揮するのが「健康保険証」です。ご存知の通り、医療機関で治療を受ける際、健康保険証を示せば自己負担は3割で済みます(公的医療保険の対象となる治療の場合)。ただし、入院や手術ともなれば、3割負担でさえ数十万から100万円を超えるケースもあります。貯金で備えておきたいと考えるのは、高額なケースを想定してのことでしょう。
 そんな時のために知っておきたいのが、「高額療養費制度」です。高額療養費制度とは、ひと月の医療費が高額になった場合、定められた上限額を超えた分を払い戻してもらえる制度。つまり、医療費の自己負担には上限額が決められていて、それ以上は払わなくていいということです。

一般的な収入の人なら月当たりの医療費の上限は8万円強

 上限額は世帯や個人の所得により異なりますが、69歳以下で一般的な収入の人なら、上限の目安はひと月で8万円強となります。上限額の計算式をご紹介しましょう。

*80,100円+(医療費-267,000円)×1%
(会社員の場合、年収約370万円~770万円程度)

医療費は3割に減額する前の金額を入れます。例えば医療費が100万円、自己負担で3割の30万円を払ったなら、
*80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円……これが上限額

すでに30万円を支払っていますが、自己負担の上限は87,430円となりますから、超えた分が戻ってきます。
*300,000円-87,430円=212,570円……これが戻ってくる金額

 収入が多い人ほど上限額は上がり、少ない人は下がる仕組みになっています。同じ100万円の医療費がかかったとき、年収約770万円~約1,160万円なら上限は171,820円、年収約370万円までの人なら、同57,600円です。

対象は保険診療の医療費のみ

 高額療養費の対象となる医療費には条件があるので確認しておきましょう。

  • 上限額は保険診療の医療費を月単位で計算。
    例えば8月なら8月1日~8月31日まで。7月下旬から8月上旬にかけて入院した場合は分けて計算し、その月の自己負担が上限を超えなければ対象とはならない。
  • 差額ベッド代や入院時の食事代、高度先進医療は対象外。
  • 70歳以上の方も、高額療養費制度を利用できる(上限額は69歳以下の人と異なる)

 自分から希望して個室等に入った場合の差額ベッド代や高度先進医療は対象となりませんから、ある程度の貯金や、場合によっては民間の医療保険を検討する必要もあります。とはいえ、ホッとした方もいるのではないでしょうか。

さらに限度額を減らす仕組みもある

 次のような場合は、負担を軽減することができます。

同じ月内なら合算できる
  • 一つの医療機関では上限額を超えなくても、同じ月の別の医療機関の自己負担を合算できる(69歳以下なら1回21,000円以上)。
  • 1人1回分は上限を超えなくても、同じ世帯(同じ医療保険に加入している人)の自己負担を合算できる(69歳以下なら1回21,000円以上)。
1年に4回以上なら上限額が下がる
  • 過去12ヶ月以内に3回以上、上限額に達したら4回目から上限額が下がる。
    年収約770万円までの会社員なら44,400円、年収約770万円~約1,160万円なら93,000円になります。

高額な医療費がかかったら必ず申請を

 入院などで高額の医療費がかかることがわかっていれば、加入している公的医療保険(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険なら自治体など)に事前に申請して「限度額認定証」をもらっておけば、医療機関の窓口では、自己負担までの支払いで済みます。
 日本に住む人は、原則なんらかの公的医療保険に入っています。毎月の保険料も決して安くはありません。該当する時は必ず申請したいですね。忘れている分はありませんか?申請の時効は、診察の月の翌月初日から2年です。

 実は私自身、この制度に2度、助けられました。一度目は自分の入院、二度目は家族の入院。いずれも突然の思いがけない病気でした。回復できるだろうかという病状への不安と同時に頭をよぎったのは、やはり医療費のことでした。仕事柄、高額療養費制度を知っていたので、お金の不安はそれほど大きくなく、治療に専念できました。
 貯金や医療保険への加入は、その目的をしっかりと意識し、同時に高額療養費制度についても必ず知っておきたい。高額な医療費がかかる場面で、金銭的な負担が軽くなることは、精神的な安定にもつながり、その効果は想像以上に大きいものです。

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