FPコラム

日本FP協会が認定するファイナンシャル・プランナーの上級資格をもったCFP®認定者が、くらしとお金に関する社会保障制度や税制の解説から、生活の中で見つけたちょっとしたアイデアまで、みなさまのファイナンシャル・プランニングを考える際のきっかけ作りとなるような情報をファイナンシャル・プランナーの幅広い視野で取り上げ、月1~2回お送りしています。

  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。
最新号
2019年2月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 柳田 典子

「退職金」受け取り方による税金の違い、知っていますか?

 長寿社会となった今、多くの方は今まで以上に老後の生活費に対する不安を抱えています。
 老後の生活費を支える大きな資金としては、年金と退職金が挙げられます。
 退職金については一時金で受け取る方法と、年金のように分割で受け取る方法、いずれかを選択できる場合が多いですが、実は、受け取り方によって退職金に掛かる税金が変わってきます。
 今回は退職金を一時金と分割で受け取る場合の違いについて解説します。

まずは受け取り方の違いによる税金の違いを確認

 老後の生活費として、多くの方の資金源となるものは以下の3つです。
1.公的年金
2.企業年金
3.退職金
 公的年金は、人によって金額は違えども受け取ります。
 退職金は企業によって、退職一時金のみ、企業年金(企業型確定拠出年金や確定給付型年金など)のみ、退職一時金と企業型年金の併用、に分かれています。また、その受け取り方も、一時金のみ、一時金と分割の両方を組み合わせて受け取ることができる企業、とあります。
 一時金で受け取れば「退職所得」、分割で受け取れば公的年金と同じように「雑所得」の扱いとなるため、税金の計算が違ってきます。

一時金で受け取る場合

 「退職所得」は他の所得と合算せずに分けて計算を行う「分離課税」です。長年の勤労に対する報償的給与としてまとめて支払われるものであること等から、税負担が軽くなるよう配慮されています。
 退職所得の計算式は以下のとおりです。
 (収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額※)×1/2=退職所得

※退職所得控除額の計算方法
・勤続年数が20年以下の場合 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続年数が20年超の場合  800万円+70万円×(勤続年数-20年)
例)退職所得控除の計算例
 勤続年数が37年の人の場合の退職所得控除額
 800万円+70万円×(37年-20年)=800万円+70万円×17年=1,990万円
 勤続年数に1年未満の端数がある時は、たとえ1日でも1年として計算します。
 また、前年以前に退職金を受け取ったことがある時又は同一年中に2か所以上から退職金を受け取る時などは、控除額の計算が異なることがあります。
国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」

 退職一時金を全額一時金で受け取る場合は、健康保険、雇用保険、厚生年金保険等の社会保険料がかかりません。
 また、退職後に国民健康保険に加入する場合は、国民健康保険料を支払う必要がありますが、保険料の計算で対象となる前年度の所得からも対象外となっており、社会保険料の面でも優遇されています。

年金として受け取る場合

 分割で年金として受け取る場合は年金の収入金額に対して「公的年金等控除額」が適用され、公的年金等と合算されて計算されます。

  公的年金等の収入金額 公的年金等に係る雑所得の金額
65歳未満の方 70万円以下 0円
70万円超130万円未満 収入金額-70万円
130万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5千円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5千円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5千円
65歳以上の方 120万円以下 0円
120万円超330万円未満 収入金額-120万円
330万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5千円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5千円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5千円
国税庁「高齢者と税(年金と税)」

 ちなみに、住民税は一時金でも分割でも計算対象となります。住民税の計算方法は以下のとおりです。
 課税退職所得金額×10%※=退職金にかかる住民税
 ※地方税法の標準税率:10%=都道府県民税4%+市区町村民税6%

どちらの受け取り方が『おトク』かは、状況により違う

 退職金の受け取り方は、受け取り時の状況によってメリットとデメリットがあります。
〔一時金のメリット〕
 例えば、住宅ローンが残っている場合。残額にもよりますが、一般的にローンの返済は早い方が得策です。一時金として受け取り、ローンを清算します。「退職所得控除」という非課税枠の適用があり、税負担は重くないと考えられるため、将来支払う利息をゼロにする方が良いでしょう。

〔一時金のデメリット〕
 まとまったお金が手に入ると、気持ちが大きくなって無駄使いをしてしまったり、一度に多額の投資をして大きな利益を狙いたくなったりしますが、そこが一時金で受け取るデメリットと言えるでしょう。一時金という大金は、これからも続く人生に大きな役割があるお金、という意識を持つことが大切です。

〔分割のメリット〕
 ローンや大きなお金が必要ではない場合、年金として受け取るようにすれば定期的な振り込みとなるため、計画的にお金を使えることとなり、結果として使い過ぎを防ぐことができるというメリットがあります。
 また、受け取るまでは会社が一定の利率で運用を続けるため、総受給額も多くはなります。

〔分割のデメリット〕
 一時金のような税優遇はなく、長期間に渡って課税対象になる点がデメリットとして挙げられます。大きな金額ではなくても、課税が継続されていくことは覚えておきましょう。

総資産と取り崩し期間を考えて判断を

 退職金の受け取り時期が近付いたら、まずは退職関係の収入以外の資産状況の把握(収入)と、リタイア後にも今と同じような生活のためのベースの金額、負担が大きくなってくる介護やリフォーム代なども検討しつつ、例えば30年程の期間と考えた場合の必要資金(支出)を確認しましょう。
 受け取り方の判断は、その結果を踏まえたうえで決めることが大切になります。

バックナンバーを見る

さらに過去のFPコラムをカテゴリ別で見る

上記以前のコラムは以下の6つに分類して掲載しています。

上へ