FPコラム

日本FP協会が認定するファイナンシャル・プランナーの上級資格をもったCFP®認定者が、くらしとお金に関する社会保障制度や税制の解説から、生活の中で見つけたちょっとしたアイデアまで、みなさまのファイナンシャル・プランニングを考える際のきっかけ作りとなるような情報をファイナンシャル・プランナーの幅広い視野で取り上げ、月1~2回お送りしています。

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  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。
最新号
2016年11月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 辻 章嗣

年金受給資格期間の短縮で変わることとは

 年金受給資格期間を25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が平成28年11月に成立し、平成29年9月分の年金から新たに約40万人が老齢基礎年金の受給資格を得られることになりました。
 年金受給資格期間とは、老齢年金の受給資格を得るために必要な期間で、保険料を納めた期間、保険料を免除された期間と合算対象期間※1を通算した期間を言います。今回は、この改正によって改めて関心が高まっているわが国の公的年金制度について分かりやすく解説します。

1.二つの年金制度と三つの年金給付

 わが国の公的年金制度は、日本国内に居住している20歳以上60歳未満の全員が対象となる国民年金と、サラリーマンが加入する厚生年金の二階建ての構造になっています。
 一方、それぞれの年金制度には、老齢、障害、遺族の三つの給付制度があります。

(1)老齢給付
 高齢に伴い受給する年金で、保険料を納付した期間や賃金(平均標準報酬額)に応じた額の年金を受給できます。この給付を受けるためには、年金受給資格期間を満たす必要があります。日本の公的年金は賦課方式※2を採用していますので、インフレにも強く終身で給付されます。
(2)障害給付
 障害に伴い受給する年金で、障害の程度に応じて受給することができます。
 例えば、独身のサラリーマンが障害等級2級の裁定を受けると、780,100円の障害基礎年金と賃金に応じた障害厚生年金を受給することができます。
(3)遺族給付
 世帯主が亡くなった時に残された遺族が受け取ることができる年金で、子供の数や配偶者の有無に応じて支給されます。
 例えば、自営業のご主人が妻と生まれたばかりの子供を残して亡くなった場合、子供が高校を卒業するまで1,004,600円の遺族基礎年金が支給され、その総額は実に約1千8百万円にもなります。

2.保険料の未払いと保険料免除の違い

 公的年金制度は、国民皆年金と言われ全国民に加入する権利が認められています。しかしながら、その制度をよく理解しないままに保険料の未払いを続ける方が散見されますが、長寿時代に不可欠な老齢年金を受給できないばかりか、障害や遺族年金の権利も放棄することになります。
 一方、失業などによって経済的に国民年金保険料の支払いが難しい場合は、保険料の免除を申し出ることができ、承認されると全額から1/4の範囲で段階的に保険料が免除されます。仮に20~60歳まで保険料が全額免除された場合でも国庫負担分に相当する780,100円の1/2が老齢基礎年金として支給されますが、保険料未払いの場合は、老齢基礎年金は一切支給されません。保険料を免除された期間は、年金受給資格期間に含まれますので、保険料の未払いとは大きな違いがあります。支払いが難しくなった場合は、まずお住まいの市町村役場に相談しましょう。

3.受給資格期間の短縮と保険料納付期間の延伸

 この度の制度改正に伴って、今まで老齢年金の受給を諦めていた人にとっては朗報になりますが、老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間保険料を全額納付した場合の年金額780,100円を基準に保険料を納付した期間に応じて支給されます。したがって、老齢基礎年金の月額を比較してみますと、納付期間が40年の場合は約65,000円ですが、20年の場合で約32,000円、10年の場合は約16,000円に限られますので、保険料の納付期間を少しでも伸ばす努力が必要になるでしょう。
 なお、受給資格期間を満たしていない方や年金額を増やしたい方は、保険料の納付期間を延伸できる保険料の後納制度や一定の条件の下で60歳以降も70歳まで国民年金に任意で加入する任意加入制度を利用することができますので、市町村役場か年金事務所でご相談ください。

4.まとめ

 今回、年金受給資格期間が25年から10年に短縮されました。60歳以上の方で、今まで老齢年金の受給を諦めていた方でその対象となる方は、年金の請求を行うことによって平成29年9月分以降の年金を受給することができるようになります。
 この機会にわが国の公的年金制度をよく理解し、厚生年金保険の被保険者(サラリーマンなど)とその配偶者を除く20歳以上60歳未満の方は、国民年金保険料を納付していただくとともに、万が一経済的に難しい方は市町村役場に保険料免除の申請を行ってください。また、ご自身が将来年金をいくら受給できるかを確認し、それを踏まえて老後のライフプランを考えてみてはいかがでしょうか。

※1 年金制度の変遷に伴って定められている年金額に反映されない期間
※2 年金の財源にその時々の保険料収入を充てる方式

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