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2022年10月号(1)
ライフプラン
CFP®認定者 髙村 浩子

移住生活で変わる家計!地方の暮らし事情を事前調査

 2014年の「まち・ひと・しごと創生法」の成立をきっかけに地方自治体における政策が本格化した移住促進事業ですが、ここ数年の新型コロナウィルス感染症による「新しい生活様式」への意識変化は地方への移住に拍車をかけることとなっています。
 漠然と描いていた地方暮らしを現実としてとらえる際、移住によって変化する家計に目を向けることも移住を成功へ導く大切な要素となるでしょう。そこで、今回のFPコラムでは地方の暮らし事情を踏まえて、移住生活で変わる家計について3つの視点から考えていきたいと思います。

住まいに関する視点

 住む環境に関するメリットとして代表的なものは「固定資産税」です。固定資産税の基本となる土地の公示価格データを都道府県庁所在地で見ると東京23区が第1位、次いで大阪市、横浜市と続きます。公示価格がそのまま固定資産税額になるわけではありませんが、目安として移住候補地の公示価格を比較しておくことも良いでしょう。
 一方で、デメリットになる可能性があるものとして居住インフラに目を向けることも重要です。水道料金は全国一律ではなく運営する水道事業者によって料金が異なります。また、ガス料金は都市ガスかプロパンガスかで料金が異なりますので、移住先の情報収集は欠かせません。

移動に関する視点

 地方における移動手段では、公共交通インフラの整備が行き届いていないなどの理由からマイカー保有率が高い傾向にあります。地域によっては世帯で1台ではなく1人1台と言っても過言ではありません。
 それによってかかる車両関連費用は、地方移住における大きなデメリットと捉える方も多いでしょう。しかし、車両の保管という観点では、首都圏の駐車場事情とは異なり居住敷地内での駐車や駐車場料金が比較的低料金である傾向もあり首都圏で1台保有するよりも安く済む可能性も考えられます。
 そのため、世帯全体の通勤や通学、レジャーでの移動手段と維持費も含めた車両保有にかかる費用を総合的に判断して比較検討する必要があります。

支援に関する視点

 地方自治体は、移住促進事業として様々な支援制度を設けています。中には、一定の条件のもとに土地と建物の無償譲渡や不妊治療費助成など若い世代をターゲットにした支援もあります。
 移住者側が求める支援に即した支援制度の策定を試行錯誤しているようですが、その支援制度を確認することで受け入れ側が移住者に求めていることの把握にもつながり、移住者と受け入れ側との目的の乖離を防ぐこともできます。

まとめ

 新型コロナウィルス感染症が加速させたとも言える働き方の変化によって、地方移住への関心は高まっています。大きな憧れを抱いての移住が後悔に繋がらないためには、移住候補地へ足を運び、その地域での暮らし事情を様々な視点から調査することが大切です。
 また、移住の目的によっては収入にも変化が起きます。自身の目的を反映させたライフプランのシミュレーションを行いながら、移住後の収支を長期的に見通すことも移住を成功させる大きな要素となることでしょう。

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