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2022年8月号(2)
住宅・不動産
CFP®認定者 渡邊 裕介

住宅ローンの借換えで知っておきたいメリットと注意点

 住宅金融支援機構が実施した「2020年度 住宅ローン借換えの実態調査」によると、借換え理由について、「金利が低くなるから」「返済額が少なくなるから」とする回答が多く、借換え後の毎月返済額の減少分の使途については、「生活費に充てた」「教育資金に充てた」と回答する割合が高いなど、コロナ禍等による収入減少に伴い、家計の見直しの一環で借換えを検討される方が多いと予想されます。家計の中で大きな割り合いを占めている住宅ローンの借換えは、固定費の見直しとして効果的です。今回は、住宅ローンの借換えのメリットや注意点について整理していきます。

住宅ローン借換えのメリットとは

 住宅ローン借換えのメリットは大きく2つです。
1.金利が下がることによる利息軽減効果
2.新たな団体信用生命保険(以下、団信)の特約が付加できる
 多くの場合、1.の利息軽減効果を見込んで借換えを考えます。借換え時のコストを加味しても利息軽減効果があるようであれば、借換えをする価値はあります。
 また、住宅ローンに付加できる団信の特約が多様になってきています。金融機関によっては、金利上乗せなしで死亡や高度障害に加え、がん等の保障を付加できるものもあるため、現在の適用金利と借換え後の金利で、それほど金利差がなく、利息軽減効果が見込めない場合でも、保障の充実という観点で借換えのメリットがあるケースもあります。

借換え時の諸費用とは

 住宅ローン借換え時に掛かる諸費用は主に以下があります。
1.融資事務手数料
 目安としては、2万円~借入額の2.2%程度ですが、保証料が発生しないネット銀行等の場合は、一律30万円や定率で2.2%が一般的です。最近は、ネット銀行に限らず事務手数料型(保証料が不要)を選べる金融機関も増えてきています。
2.保証料
 保証料とは、住宅ローンを返済できなくなってしまったときに保証会社に返済を肩代わりしてもらうための費用です。借入れの際に一括払いする「外枠方式」と金利を上乗せして支払う「内枠方式」があります。保証料は、借入額・借入期間等によって異なります。
3.印紙税 2万円
4.登録免許税 借入金額の0.4%
5.司法書士費用 10万円前後
 このように、借換えを行うためには諸費用が掛かります。そのため、諸費用を考慮した上で借換えメリットがあるかどうかを試算する必要があります。

借換えの注意点とは

 一番の注意点は、固定金利から変動金利へと借換えする場合です。金利の高い固定金利から金利の低い変動金利へ借換える場合は、当然適用金利が下がるので毎月の返済額も下がりますが、今後の金利動向によっては、借換えしない場合よりも総返済額が増える可能性もあります。将来の金利上昇リスクがあることについては十分に理解しておく必要があります。

まとめ

 最近は、借換えに掛かる諸費用もローンに組み込めることが多いため、負担感なく手軽に借換えが可能になってきています。金利差だけのメリットではなく、団信の保障範囲の充実など異なる観点からの借換えも効果的な場合があります。また、借換えに際しては、改めて融資の審査を行うため、借換え時点での収入や健康状態なども重要なポイントになってきます。
 自分自身の現在の環境やライフプランに合わせた効果的な住宅ローン借換えをしっかりと考えていきましょう。

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