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2022年1月号(1)
住宅・不動産
CFP®認定者 相澤 和久

売るのが先?買うのが先?住み替え計画のポイント

 結婚、子供の誕生・独立などライフステージの変化に伴い住まいを変えることは珍しいことではありません。一方、不動産価格の上昇、新型コロナの影響による住まいに対する価値観の変化により、購入からわずか数年しか経っていない方も住み替えを検討しているケースが増えています。そこで、持家で住宅ローンを抱えている方の住み替え計画についてポイントを解説します。

理想の住み替えパターン

 一番スムーズで負担が少ないのは、購入を先行させて住み替え先の物件に住むことです。売却を先行してしまうと気に入った住み替え先が見つからない場合は仮住まいが必要になってしまうため、経済的にも負担が大きくなります。また、持家の売却を先行すると、せっかく高く売れるかもしれない機会を逃してしまうことにもなります。

いかに高く売るか

 中古住宅の売却は、居住中の状態で買手を募るよりも空室の状態で家具などをディスプレイすることやクロス、フローリングなど小規模な補修を行うことで、前所有者の生活感を感じさせないほうが売却価格は高くなる傾向があります。販売を行う不動産会社の目線で考えても、時間や曜日の制限が無くいつでもお客様のご案内ができて室内のどこでも自由に見られる、そして新築マンションのように家具がディスプレイされている方が売りやすいでしょう。そのため、できることなら空室の状態にして売却する、つまり先に購入して転居することがおすすめです。しかし、先に購入するためにはどうやって資金調達するかという問題があります。

資金調達の壁

 購入先行住み替え計画の最大の難所、肝になる部分です。売却先行であれば、売却することを条件に新規に住宅ローンを組むことができます。しかし、住宅ローンは一人1本が原則となるため返済に余裕があるからと言って住宅ローンを2本組むことは難しく、イレギュラーな対応をしてもらえる金融機関はごく一部です。現金一括で購入できる方は少ないでしょうから、是が非でも金融機関を探さなければなりません。
 金融機関のホームページの商品概要を見ただけで諦めたり、不動産会社に任せきりにするのではなく、直接金融機関に電話で問い合わせることや、住宅ローン相談会に参加するなど、積極的に行動しなければなりません。メガバンクだけでなく地方銀行や信用金庫など地域に根差した金融機関にも幅広く相談するといいでしょう。
 なお、いくら2本目の住宅ローンが難しくても金利の高い不動産担保ローン等で資金調達することはおすすめできません。せっかく持家を高値で売っても購入した物件の利息負担が大きいため、住み替え計画全体で考えるとマイナス面が強いと言えます。その場合は、売却先行を検討するべきです。

まとめ

 現在のような売手市場の場合、購入したいと思った物件を安く買うことは難しいです。自分が良いと思う物件は他の人も良いと思っているわけで、ライバルが多い中で少しでも安く買いたいという考えを持っていてはいつまで経っても物件を買えません。その一方で、自分の努力次第で持家を高く売ることは可能です。買手の目線に立って持家を魅力的に見せる工夫をしましょう。
 なお、持家の売却が完了するまで既存の住宅ローン・新規のローンのダブルローンが続くため、持家の値段を下げて、一刻も早く既存の住宅ローンを完済したいと考えている方が少なくありません。売却が長引く事のコストは、毎月のローン返済額のうち利息相当額(マンションであれば管理費等)くらいで大きな負担ではありません。安易に値引きに応じることは避けるべきです。売却期間が長引く事を恐れず、少しでも高く売ることを目指しましょう。

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