ミニコラム:FPと考える”家計戦略”

知っておきたいファイナンシャル・プランニングの基本を、お金について学んでいる金子さんがFPから教わるミニコラムです。ライフステージに合わせて、人生100年時代の観点から「戦略」を考えていきます。
毎月第3金曜日に更新中!

2020年12月号
CFP®認定者 太矢 香苗

年金の受給年齢

Q:リタイアのタイミングは年金次第??
 たまにニュースで耳にする「定年延長」。早々にリタイアして悠々自適な生活は憧れだけど、年金をいつから受け取るかも天秤にかけなければいけないと小耳に挟んだ金子さん。どういうことなのか、FPに教えてもらいます。

金子さんとは?
出版社勤務の30代。社内異動でこの春から経済誌担当になったもののお金のことはさっぱり…。「人生100年」や「老後資金2,000万円不足問題」をキーワードに取材を重ねる中、自身のお金の知識に不安を感じるように。FPにレクチャーを受けながら、目下お金の勉強中。

 公的年金は定年後の貴重な収入源となります。その公的年金の受給開始年齢は、今後65歳に引き上げられます。
 人生100年時代の今、会社員の場合は60歳で定年を迎えたあと、年金受給年齢までは勤務先の継続雇用制度などで雇用を確保されていますが、それ以降もなるべく長く働いて勤労収入を得ることができれば、公的年金収入だけに頼る生活期間を短縮するという意味では有効な手段となります。

60歳で完全リタイアする場合

 公的年金は60歳から繰り上げ受給もできますが、一度繰り上げ受給をしてしまうと、年金は生涯にわたって減額されたままになります。
 60歳で完全リタイアを考えているのであれば、60歳~65歳の期間の生活資金を確保する必要があります。iDeCoや個人年金、つみたてNISAなどで60歳になるまでに準備をするか、60歳で支給された退職金を計画的に取り崩して使うかなどの方法を考えるようにしましょう。

在職老齢年金制度

 60代以降の働き方に影響するといわれるものに「在職老齢年金制度」があります。老齢厚生年金の報酬比例部分と就労収入の合計が基準額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる制度です。年金が減るなら働かない、働く日数や時間を抑えるという考えを招き、厚生労働省などで改正が検討されてきましたが、2022年4月から、60代前半については基準額を28万円から47万円に引き上げることが決まりました。

在職老齢年金制度の影響を受けない働き方

 在職老齢年金制度は厚生年金加入者が対象となるので、勤務していた会社を継続雇用で働くのではなく、独立してフリーランス(自営業)となり、会社と業務請負契約を結び、厚生年金に加入しない働き方をすれば、老齢厚生年金はカットされません。
 ただし、長年勤めていた人が、いきなりフリーランス(自営業)として独立するとなると、毎年の確定申告など、会社員時代にはなかったこともしなくてはなりません。年金のためだけに独立することは、慎重に判断したいところです。

なるべく長く働く

 2021年4月から、会社は社員に70歳まで働く機会を確保することが努力義務となります。これからは70歳まで働くことが当たり前になる時代になるでしょう。
 また、2020年5月に成立した年金制度改正法により、2022年4月から公的年金の受給開始時期の選択肢が60歳~75歳の間に広がります。
 勤労収入を得ていれば、年金の受給時期は自分自身で選ぶことができます。働き方と年金受け取り年齢をうまく組み合わせていくことが、これからの戦略といえるのではないでしょうか。

  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフです。本コラムは執筆者個人の見解を掲載したものであり、当協会としての意見・方針等を示すものではありません。
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