ミニコラム:FPと考える”家計戦略”

知っておきたいファイナンシャル・プランニングの基本を、お金について学んでいる金子さんがFPから教わるミニコラムです。ライフステージに合わせて、人生100年時代の観点から「戦略」を考えていきます。
毎月第3金曜日に更新中!

最新号
2021年3月号
CFP®認定者 上野 誠

お金も心も安心なエンディング

Q:「相続で争う」って本当にあるの?
 会社の同僚が「親戚が亡くなったんだけど、どうやら相続で揉めてるみたいなんだよね」とポツリ。ドラマや映画だけの話じゃないの!?と驚いた金子さん、FPに円満な相続のアドバイスを求めに来ました。

金子さんとは?
出版社勤務の30代。社内異動でこの春から経済誌担当になったもののお金のことはさっぱり…。「人生100年」や「老後資金2,000万円不足問題」をキーワードに取材を重ねる中、自身のお金の知識に不安を感じるように。FPにレクチャーを受けながら、目下お金の勉強中。

 2019年の厚生労働省「人口動態統計」によれば、1年間に亡くなった方は約138万人※。相続はこの亡くなった方の数だけ発生することになります。
 「我が家は財産が少ないから争いなんて関係ない」なんて声をよく耳にします。しかし、相続発生後に財産の大小とは関係なく、家族のそれまで抑えていた不満が表に出て争いになることは実際に起こるものです。
 本人も残された人も安心なエンディングを迎えるために、「遺言書」の考え方をお伝えします。

「家族のために準備する」という想いを

 相続準備と聞いて「遺言書」を思い浮かべる方は多いでしょう。自身の死後、財産をどう分けるか指定するため作成するのが遺言書です。相続争いを防ぐ基本なのですが、「なかなか手をつけることができない」と思われがちでもあります。
 「死後のことを考えるなんて縁起でもない」
 「遺言書なんてなんだか難しそう」
 「子ども達に任せればいい」
 このような理由で準備が進まないようですが、「万が一の時が心配なので、親にはきちんと準備をしてほしい」という子ども側の声を聞くことも。また、遺言書がないため故人の意思がわからず、相続人同士でトラブルになるケースも見受けられます。
 遺言書を準備することは残された家族の負担軽減に繋がります。「家族のために準備する」という想いをもって取り組んでみてください。

まずは財産の分け方を考える

 遺言書は原則として自由に財産の分け方を指定できますので、まずは家族にどのように財産を残したいかを考えましょう。ただし、争いを避けるためには次の3点に気をつけて検討することが大切です。
 ・残された家族の生活に不安はないか
 ・今までの家族に対する援助の有無
 ・今後の生活で介護など支援してくれる家族がいるか

 また、なぜそのような分け方にしたのか想いを残すことも重要です。遺言書には「付言事項」という法的な効力のない項目がありますので、これを使って理由を伝えるとよいでしょう。
 なお、相続人が配偶者、子、父母など兄弟姉妹以外の場合には「遺留分」があります。遺留分は法律で相続人に認められている「最低限の取得分」と考えてください。遺留分を考慮しない遺言書も作成はできますが、遺留分を主張できる相続人が「遺留分侵害額請求権」を行使すると、争いになることがあるため、注意が必要です。

 この他、財産をどう分けるか不安や心配、疑問のある方は多いでしょう。また、今回は取り上げていませんが、遺言書にも種類があります。どのように遺言を残すか、相続に詳しいFPや各士業者に相談されることもおすすめします。

元気なうちに向き合う

 「人生100年時代」とはいえ、しっかりした判断のもとに相続を考えることができる時期は限られています。先延ばしにして体調が不安になってからでは考えもまとまりません。
 きちんとした準備ができれば、すっきりした気持ちで安心して残りの人生を送ることができるでしょう。ぜひ元気なうちに、ご自身のエンディングと向き合ってみてはいかがでしょうか。

※出典:厚生労働省ホームページ「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」
  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフです。本コラムは執筆者個人の見解を掲載したものであり、当協会としての意見・方針等を示すものではありません。
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