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2022年6月号(2)
保険
CFP®認定者 髙村 浩子

公的介護を超えたらどうする!介護保険の基礎知識

 人生100年時代と言われている現在、長生きリスクが老後の不安に繋がるという方も多いのではないでしょうか。厚生労働省による報告では2019年度末時点での要介護(要支援)認定者数は669万人で公的介護保険制度スタート当時の2000年と比較すると約2.6倍となっており、自分らしい老後を過ごすための手段としての公的介護保険、民間介護保険についての理解は重要です。

公的介護保険制度とは

 公的介護保険制度は介護保険法に基づき2000年からスタートし、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとなっています。
 65歳以上の第1号被保険者と40歳以上64歳までの第2号被保険者が対象となり、介護保険料負担をしながら介護が必要な状態と認定された際に介護サービスを受けることができます。ただし、第2号被保険者の場合は、末期がんや関節リウマチ等の加齢に起因する16の特定疾病が原因で介護が必要になったと認められた場合に限り、介護サービスの利用が可能です。なお、費用の50%は公費(税金)で賄われています。

公的介護保険制度の給付額

 介護サービスでは要介護度によって支給限度基準額は変わり、最も軽い「要支援1」で50,320円/月、最も介護度の高い「要介護5」で362,170円/月です。
※2019年10月現在、1単位原則10円として計算
 この費用のうち原則1割(所得により2割、3割)は自己負担ですが、自己負担額が高額になった場合、高額介護サービス費及び高額医療・高額介護合算療養費制度の利用により毎月の負担を軽減させることができます。自身が公的介護制度を利用することとなった場合に、どの程度の自己負担額が生じるかを理解しておくことは、民間介護保険の加入を検討する際の重要なポイントとなります。

公的介護保険と民間介護保険の違い

 将来の介護に不安を感じている方の中には、民間の介護保険への加入を検討している方も少なくないでしょう。その際に目を向けたい双方の違いは、給付方法と給付要件です。
 まず給付方法ですが、公的介護保険は「介護サービス」そのものに給付されます(現物給付)。利用者は介護サービスを提供する事業者と契約し、様々なサービスを受けます。そして、そのサービスにかかった費用は利用者負担(支払)分以外が介護報酬として市区町村から事業者へ支払われます。一方で民間の介護保険は「給付金」として受取人に支払われます(現金給付)。公的介護保険でカバーできない範囲・費用に使うことができます。
 次に給付要件ですが、公的介護保険は全国一律の基準に基づき客観的に判定する7段階の「要介護認定」によって決まります。民間の介護保険は加入している保険会社ごとの基準に基づき支払われ、多くの場合、公的介護保険の認定度と保険会社独自の認定要件があります。

まとめ

 ライフプランにおけるリスク管理では、まず社会保障制度を活用するという認識を持つことが大切です。なぜなら、社会保障制度は国民の安心や生活を支えるセーフティネットであり「全ての人々の生活を生涯にわたって支えるもの」という目的のもとに、私たちは「保険料」や「税金」という形で共助の一役を担っているからです。
 その上でどの程度の介護状態からどの程度の金額が不足になるのかを見据え、自身の目的にあった民間の介護保険を検討してみても良いのではないでしょうか。

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