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2022年5月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 和泉 聖一郎

FIREという考え方

 人生100年時代における働き方の変化に伴い、65歳や70歳まで働くことを前提とする人々が増える一方、ミレニアル世代を中心にFIREにより早期リタイアを目指す人々も増えているようです。今回はFIREをライフスタイルという観点から見ていきましょう。

FIREとは

 FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字で、経済的に自立することで早期退職の実現を目指し、退職後は資産運用などで生計を立てていくライフプランのことです。経済的自立とは、給与収入等がなくても投資の運用益などで生活できる状態のことを指します。経済的自立を達成することで、早期リタイアをし、自由に暮らす生き方、それこそがFIREの考え方です。

FIREの指標

 FIREを実現するにはどれくらいの資産が必要なのでしょうか。その目安のひとつに「25倍・4%ルール」というものがあります。これは、年間生活費の25倍の資産を築き、投資などで年利4%の運用益をあげれば投資元本をキープしながら生活費を捻出できるという考え方です。
 毎月の生活費が15万円、1年間で180万円なら、180万円の25倍の4,500万円の資産を築き、4,500万円を毎年4%で運用できれば、働かなくても暮らしていけるという目安です。
 運用益で生活できる目途が立った段階でリタイアし、労働に縛られない人生を始めるのです。

FIREという生き方から何を学ぶ?

 FIREは、年間支出が少ないほど達成しやすくなります。FIREを目標にすれば節約を心がけ、貯蓄に励むようになるでしょう。自分にとって価値のあるものにだけお金を使うようになり、少ないお金でも上手に暮らせるようになります。
 経済的自立に向けて目標を立て、家計管理や資産運用を学ぶことでマネーリテラシーが身につきます。「FI(Financial Independence)=経済的自立」が実現できれば、好きなことをして自由に暮らせます。働くかどうかも自由です。FIと「RE(Retire Early)=早期退職」は必ずしもセットではありません。

Life PlanからLife Designへ

 今までの「ライフプラン」という考え方は、『大人になると就職し、やがて結婚して家庭を築き、子供が生まれれば、教育資金を工面し、住宅ローンでマイホームを取得し、老後の資金を準備する』といった終身雇用が当たり前だった「昭和モデル」の人生を前提としたものではなかったでしょうか。
 少子高齢化社会が到来し、働き方改革を進める中でコロナ禍を経験し、私たちそして社会の「価値観」は確実に変わりました。自分にとって何が大事なのか、について今までの常識はあまり役に立たなくなっています。自立した個人が「自分の人生をデザインする」という機運が醸成されつつあります。

まとめ

 FIREが特徴的なのは、経済的自立のためにお金持ちになることがゴールなのではなく、あくまで豊かな人生を楽しむことが目標とされています。
 FIREの主な支持者は、マイホームやマイカーに強い憧れを持たず、従来の価値観に縛られないミレニアル世代及びZ世代(2000年代に成人や社会人となる世代)の人たちです。過剰消費への疑義が根幹にあり、SDGsへの関心が高く、仕事よりもプライベートの優先など、あくまで目的は豊かな人生設計を模索して自分で作りあげていくという共通認識が背景にあるようです。
 FIREのコンセプトは、自分の人生において何を優先させるかを考えることです。そしてお金は人生で最も重要なものを手に入れるための「ツール」に過ぎません。
 FIREは決して「蓄財してお金持ちになって、早期退職を実現すること」を求める生き方ではなく、労働に縛られずに時間や心のゆとりを追求する生き方と言えます。

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