SG-Nextステージ千葉
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テーマ
企業年金が抱える問題と解決策~企業年金制度の破綻、基金崩壊にFPができる解決手段とは~
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日程
2011年4月15日(金)
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時間
18時45分~20時45分
(所要時間:2時間00分) -
活動場所
船橋商工会議所 3階 305会議室
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講師
福島 芳己 様
(SGメンバー/アセット・アドバンテージ株式会社代表取締役 )
関西大学卒業。旅行代理店に16年間、勤務。主として営業・マーケティング業務に従事し、米国駐在後、シンガポールでベンチャー企業設立に参画し、GMとして東南アジア 各国とのビジネスを経験。 帰国後、米国のマーケティング会社日本法人副社長を務める。これまでの経験を活かし、マーケティング視点から、一般生活者だけ でなく、中小企業へ退職金・年金・保険他のファイナンシャルコンサルティングを通じて、積極経営を促進したいと考え、独立系FP会社「アセット・アドバンテージ」を設立。 -
課目
・ライフ・リタイアメントプランニング
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単位数
2単位
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参加人数
合計18名
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コメント
公的年金を補完する役割を果たすと期待された「企業年金制度」メディアで特集を組まれるほどその破綻が目前に迫っています。
4月の勉強会は企業年金の問題点を洗い出し、その解決策として「選択制401K」を推奨するSGメンバーの福島氏に講演いただきます。
厚生年金基金の代行返上・解散、退職給付債務とは一体何か?企業年金の問題点と解決策を学びます。
【研修内容~講義録一部抜粋~】
みなさん、こんばんは。アセットアドバンテージの福島でございます。
ただいまご紹介いただきましたように、1年半くらい前にこちらのSGのメンバーになりまして真面目にコツコツ参加していたのですが、昨年会社を立ち上げてからは忙しくなりましてなかなか来られず、今回このような形で皆様方に企業年金、401kのお話をさせていただくことになりました。できるだけ平易な言葉でわかりやすくお伝えしたいと思います。
簡単に私の自己紹介をさせていただきます。まったく金融業界の経験がございません。いま司会の方からご紹介いただいたように、旅行会社にいたりマーケティングの会社にいたりということで、金融関係には携わっておりませんでした。
FPとして独立をいたしましたのがちょうど1年前で、それまではこちらの勉強会だとかいろいろなところに来て、成功されたFPの方のセミナーを聞きながら、独立を考えておりました。ずっと法人営業をやってきたものですから、法人を中心に営業をしていきたいなと。法人の先にある個人のコンサルティングまでできればやっていきたいなということで、まず入り口は法人営業をやりたいということでした。というより、個人の営業をあまりやったことがなかったもので、そこから仲良くなって、B to B to C という形でやりたいと思ってスタートしました。
スタートはしたのですが、商材をどうしようかということでいろいろ探しておりまして、その中で401k、とりわけ選択制401kという昨今わりと注目を浴びている、確定拠出年金の中でも少し変わったものがありまして、これを入り口にやっていこうということで、昨年の7月にアセット・アドバンテージという会社を作りました。
のちほど、これから企業年金のお話をする中で、いろいろな問題点がでてきますから、そのソリューション、解決策としてこの選択制401kというのがどういうものか、お話をしたいと思います。メインは企業年金全般のお話、現在抱えている問題点、まずそちらを最初にお話したいと思います。
今日はプロジェクターがないので、こちらレジュメに沿って進めていきたいと思います。
それでは、従来の企業年金ということで、最初のページですが、いろいろ絵をかいてあるものですね。FPの方はよく見られていると思います。1階は国民年金があって、2階が会社員の方の厚生年金、公務員の方は共済年金。今日お話するのは3階部分の企業年金。厚生年金基金、適格退職年金、自社の退職金ですね。この辺のお話を最初にしていきたいと思います。
(中略)
次の公的年金の問題点ということで、これは昭和36年4月2日以降生まれの方は65歳までは年金は一切もらえません。60歳で退職すると60歳以降はもう1銭ももらえないということで、さきほど申し上げた月28万円の総務省が出している必要な生活費、これを5年間で計算すると1,680万円です。60歳で1銭も持っていないと、働いて稼ぐか、なんとかしないと手当てができないお金だということに成ります。
いま65歳というお話をしましたが、公的年金も非常に財政が厳しくて、この間の報道でもありましたように、需給開始年齢が68歳くらいになるのではないかという話があります。基本的に財源がない場合は、財源を増やすために消費税だとかいろいろな税金を投入するか、それができない場合は需給開始年齢を引き上げるか、需給金額を減らすかということが想定されます。
実際、60歳のときに退職金をもらって、その退職金で65歳で年金をもらうまでカバーできるのかというと、それは非常に厳しいと思います。私の仕事はいま401kの導入のコンサルティングで、制度設計から最初ヒアリングをして、どういう退職金制度に入っていてそれをどういうふうに401kに移していこうかと。こういう仕事で企業さんにはよくおうかがいするのですが、残念ながら退職金制度を持っている企業はほとんどないです。ここにデータが出ていますが、退職金制度がない企業が増えてきています。平成20年には15%、100件のうち15件は退職金制度がない。私の感触では、もっと退職金制度がないのではないかな、あったのだけれど全部やめてしまった、適年の移行前に精算してやめてしまったとか、というところが多いのではないかなという印象を持っています。
(中略)
先ほどの図でもありましたように、1階が国民年金(厚生年金の定額部分)、厚生年金は2階の部分ですね。簡単に書くと、厚生年金の部分を企業が運用することによって、もっと自分のところの従業員にはプラスアルファを出しますよ、国に代わって運用しますよというのが代行制度なのです。
なぜ代行制度ができたのか。昭和40年に厚生年金基金制度ができました。このときはすごく景気が良くて、運用利回りも良くて、いま基準は5.5%で回していますが、この40年代、50年代当時はものすごく景気が良かったのです。どんなファンドマネージャーがやってもプラスアルファが出せました。だから、やらなければ損みたいな感じで、こぞって企業は厚生年金の代行制度をやりました。厚生年金加入者の3人に1人はこの厚生年金基金に加入していたと言われています。それくらい厚生年金基金はプラスアルファを出せたという時代背景がありました。
資料の中の、「厚生年金基金の加入者の推移」を見てください。いちばんピークだったのがちょうど10年前くらいですか。1,200万人くらいの加入者がいました。基金も1,800件くらいあったのですが、だいたい加入者も基金も3分の1くらいになりました。なぜこうなったのかということを、これからご説明します。
その前に、厚生年金基金をどのような形で企業が作っていたか、いわゆる設立形態ですね。それを次のページに書いています。
(中略)
適格退職年金、これの特徴について。もう廃止になるので、詳しい話はしませんが、これは役員は入れない、従業員だけなのです。あとは生命保険料控除というところ。
実際にもう一つ確定給付年金というのがあるのですが、さきほど受け皿は二つしかないという話をしたのですが、もう一つやろうと思えば、厚生年金基金、適年の受け皿として確定給付年金というのがあります。財政が健全であれば、これにも移せるのです。これに移すには非常に積立の基準が厳しくて、適年をやっているところで、これに移せるところはほとんどないと思います。選択肢としてはあります。厚生年金基金も適年も確定給付型の年金でしたので、5.5%の運用利回りが出せないので、労使の合意をとって1%ぐらいにして出そうとしたのが確定給付年金なのです。おそらく基準が厳しいのでこれには移せないと思います。
適格退職年金という年金制度もあるということです。
(中略)
適年は来年廃止。社内積立も引き当てが2003年になくなって、予定利回りの5.5%が出せなくて積立不足になっているという状況です。企業年金の問題点としては、だいたいこういうところが出てきています。
ここで1回質問を受けます。
Q 厚生年金の報酬比例部分というのは何ですか。
A 厚生年金というのは二つの部分から構成されていて、いまご質問いただいたのは、報酬比例部分ですね。もう一つ定額部分というのがあります。昔は両方とも60歳からもらえました。今は生年月日で区切って段階的に減っていくのです。
みなさん、会社に勤めていたときに給料が違いますね。等級表というのがあって、給与によって支払っている金額も違うので、たくさん払っている人は報酬に比例してたくさんもらえる、これが報酬比例部分です。
定額部分は65歳になったときに、国民年金がもらえますね。ここにスライドしていく部分です。
Q 物価スライドからマクロ経済スライドに変えたということは、こっそり支払額を抑えたということですか。
A 背景としてはそれはありますね。ただ、少子高齢化でどんどん支える人が少なくなってきて、物価と同じだけ上げていると年金財政ももたないということで、トータルで考えていこうということでこういう制度になっています。
(中略)
こういういろいろな問題点があったというところまではご理解いただいたと思います。ここで登場するのが確定拠出年金というものです。14ページ。
401kというのはみなさん、聞いたことがありますね。なぜ401kというかご存じですか。
アメリカの法律で、これができたのが1978年なのですが、内国歳入法401条k項というのがあるのです。ここからとっています。これはどういう法律かというと、確定拠出年金、従業員が自分で運用していく、その拠出した分については所得控除をやりますよというのが、「内国歳入法401条k項」という法律なのです。ここからでたのです。
日本でなぜ「ヨンゼロイチケー」といわないのかというと、アメリカでも「フォーゼロワンケー」とはいわず、「フォーオーワンケー」というのです。そういうところもあって、「ゼロ」と発音せずに、日本も「ヨンマルイチケー」になったという話です。
(中略)
それから、次のページに行きます。15ページ。新しい企業年金。先ほど言いました確定給付型年金。これは厚生年金基金と適年の受け皿ですね。
これには規約型と基金型というのがあります。規約型いうのは、その企業の中で年金の規約を作って、信託銀行だとか生命保険会社に運用を任せる。基金というのは、外に年金基金という母体を作って、そこを運用母体として運用の指示を出すということで、信託銀行や生命保険に依頼する。自社に作るか、基金を外に作るか、確定給付年金の場合、その2種類があります。
いずれにしても、DB=Defined Benefit 企業の責任ですべて運用しますよというのがこれなのです。実際、いままでの5.5%を1%ぐらいに下げて運用しますよという形で、これが登場しました。当時は日本国債が1%ぐらいでしたから、それで充分回せていたのですが、ご存じのように昨今、日本の国債の金利もああいう状況ですから、実は1%でも回せなくなって、ここもたいへんな状況になって、いったいどうなっていくのでしょうというところです。
それにひきかえ、DCは従業員、個人が選ぶ、401kという制度の中に投資信託もあれば株式もあれば債券もあれば定期預金もある。個人が何を選ぶかによって運用成績も変わってきますので、退職時に受取額も変わってくる。これはちょっと日本人にはなじまないのかもしれません。決まったものをみんな同じだけもらうというカルチャーがあるので、ここは根付きにくいところではないかと思います。
次が、確定拠出年金誕生の背景。これはいままで申し上げてきたことのまとめという形で聞いていただきたいと思います。公的年金が非常に問題だ。非常に不安になっている。さきほど言った年金、退職金の負担が企業の収益を圧迫している。積立不足が深刻だ。会計制度が変わって、債務を即時認識しなくてはいけないということがあります。運用利回りがどんどん下がってきている。
もう一つ、1から4まではこれまでお話したことなのですが、5番目、雇用形態が変わってきている。労働者の意識もすごく変わってきている。今まで、私が大学を出て企業に勤めた頃とは終身雇用制を前提としていました。私自身も転職するなどとは夢にも思っていなくて、いかに社内で出世するか、できるだけたくさんお金をもらうかみたいなことを考えて、どうしたら出世できるのだろうか、どうやってこの支店長にゴマをすろうかみたいなことばかりを考えていました。今はそういうことではなくて、どんどん労働者の意識も変わってきて、正社員という考え方もなくなってきて、パートで派遣でという、企業側もそういう雇用調整をするようになってきて、ここの意識が変わってきたというのも大きいですね。
なぜかというと、いままでお話してきた企業年金は個人の財布の中には入っていなくて、辞めるときにちょこっと精算する形だったのですが、401kは自分の財布なので、会社を変わったときも持っていけるのです。これは「ポータビリティ=持ち運び自由」というものです。いろいろなところに転職しても持っていける。ただ、転職先に企業型の401kがあれば、そこにもっていけるのですが、ない場合には個人型の401kに持っていける。この5番目はそういうこともあって、401kの誕生の背景になったということです。
(中略)
もう一つのメリットは、運用利益が非課税になるということです。どういうことかというと、定期預金は20%利子税がかかります。これを401kのという制度の中で定期預金に預けると利子税がかからないのです。かからない金額がそのままどんどん複利で運用されて、課税が繰り延べされていきます。こういう制度になっています。
投資信託は、ノーロードファンドは別として入り口でだいたい3.15%の手数料がかかります。401kの中に入るとこれがかからない。具体的にいうと、野村證券で買うAという投資信託が401kに入っていれば、野村證券では100万円でかうと97万からスタートなのですが、401kでは100万からスタートできる。手数料の分は払わなくていい。あと信託報酬もきわめて低額で設定されています。
運用利益は、投資信託にしても定期預金にしてもすごくメリットがある。うまく運用していくと、この制度を使ってうまくお金をためていける、そういう制度です。
受取りのところも、一時金で取る場合は退職所得控除、年金のときは公的年金控除が使えます。受取時もこういうメリットがあるということを覚えておいてください。
ポータビリティについては、さきほど全体の401kのところでお話しましたが、それと同じです。まず転職先に401kがあるときは、継続が可能です。ただし、こういうふうに書くと誤解されるのですが、会社を辞めるときには、1回、401kの中の商品を現金化して精算しなければいけない。お金を持って、次の会社の401kの制度にいかないといけない。多くの場合、Aという会社の401kの中に入っていた金融商品がBという会社に転職したときにその金融商品がなかった場合、もし同じ商品があったとしても、1回精算をして移らなくてはいけない。そこだけ注意をしてください。お金は持っていけるということです。
転職先に401kがない場合、個人型に持っていけます。先ほどご質問があったように、運用指図のところは、自分で運営管理機関を選んで運用指図をしていくことになります。会社を辞めて自分が1号被保険者、個人事業主になった場合も個人型になる。転職先に401kがなくて個人型に入った場合は、拠出限度額が2万3,000円ですが、個人事業主の場合は6万8,000円になります。
401kは、主婦=3号被保険者と公務員は入れません。
それから給付の種類。これも通常の401kと同様、60歳まで引き出しができない。
(中略)
今日は本当にありがとうございました。もしご質問がありましたら、個別に承りたいと思います。ご清聴ありがとうございました。