SGネクスト:活動報告
日時 2024年03月09日(土) 14時30分~16時30分(所要時間:02時間00分)
開催場所 四谷地域センター 11F 集会室4
テーマ 公的年金(GPIF)と企業年金に学ぶ長期資産運用
講師 田川 勝久(たがわかつひさ)氏 /CFP、外部講師
 特定社会保険労務士、中小企業診断士、1級DCプランナー、DCアドバイザー他
 1976年 中央大学商学部会計学科卒業
 1976年 ㈱JCB入社、人事部を経て、企画部部長、総務部部長を歴任
 2002年 JCB厚生年金基金(現JCB企業年金基金)兼JCB健康保険組合の常務理事
 2007年 早稲田大学大学院MBA
 (現職)企業年金連絡協議会 専任顧問
 年金綜合研究所評議員、年金シニアプラン総合研究機構評議員、日本年金学会幹事
課目名と
申請予定単位数
課目名
・金融資産運用設計
単位数:2単位
参加人数 合計17名
コメント  GPIFや企業年金等の長期資産運用の実態に関して、実際の運用経験を基に解説。
 公的年金は国民年金(基礎年金)と厚生年金(報酬比例部分)で、企業年金は確定給付型/DBと確定拠出型/DCで構成されている。確定給付型/DBの基本構造は、在職中の積立金+運用益で退職時の給付額(年金原資)が決まり、退職後に年金として支払われる。運用リスクは企業が担い、年金原資を分割して利息と共に受け取っているケースが多い。将来の年金給付を確実に行うためには、年金原資を金融商品などで運用して、年金債務を上回る年金資産を確保しなければならない。年金資産の運用では、目的達成のため、適切なリスクの下で必要な運用利回りを目指して、できる限り高い収益を獲得する効率性の高い運用を行うことが重要となる。
 確定給付企業年金/DBは年金資産運用の意思決定主体が基金や事業主であり、収入である掛金+運用益と支出である給付額が等しい収支相当の原則にて運用される。基本ルールとして、運用に携わる関係者に対して受託者責任(善管注意義務、忠実義務)が求められ、資産運用の基本方針・ガイドラインを定めて運用受託機関との契約締結を行う。意思決定プロセスは、資産運用委員会(諮問機関)が流動性・収益性・安全性の視点等から検討し、理事会が審議・承認・上程し、代議員会が基金の最終意思決定をする。運用の基本は、リターンとリスクを充分考慮し、複数資産に分散運用する。また、長期投資期間による時間分散で収益安定化が期待できる。
 年金基金では、直接運用せずに多くは受託機関(信託銀行、投資顧問会社、生命保険会社)に運用委託する。運用商品は、複数の年金基金の資金を集める合同運用型、個別の年金基金単独の直接投資型がある。委託形態は、4資産(国内外株式・債券)の構成比を協議し運用機関に委託するバランス型、運用資産やスタイル毎に運用商品と運用期間を選択し委託する特化型がある。日常的な重要事項としては、月次の掛金・給付(入金、支払)を円滑に行うこと、基本方針に基づき運用資産の時価変動によってリバランスを実施すること。運用機関(商品)=マネージャーを選択する上で、定性評価(投資哲学、投資プロセス等)と定量評価(運用実績)の両面からの評価が重要。運用哲学・プロセス・実績に対して自身が理解して説明し、基金関係者が理解できることが必須。同等類似の運用商品との横比較、コンサルタントの中立評価、説明に顧客志向・優先が現れているかも重要。過去の運用利回り実績はあくまで参考と考え、決して将来を保証するものではないことに注意。運用業務は専門性が高く、プロの専門家に良く聴くこと、こつこつ調べて理解することが大切。また、資産運用は特にルールに基づいた倫理順法と基本の実践による透明度の高い業務遂行が何より重要である。
 公的年金/GPIFは世界最大であり、運用資産額は1,700億ドル(2021年末)。基本ポートフォリオは4資産(国内外株式・債券)ほぼ均等割合で、国内株式は全体の7%を保有。伝統的な投資対象資産(株式・債券)とは異なるリスク・リターン特性(流動性低、利回り高)を有しているオルタナティブ資産も組み込まれているが、その情報非対称性(透明性確保)が問題となっている。外部監査などのリスク対応策を含め改めて議論し、国民的な合意形成を図る必要があるが、全体の1%程度の運用ではある。
 まとめとしては、熟慮・忍耐、基本の徹底こそが資産運用の成功につながる。分散投資の実践、政策アセットミックスの設定、長期投資を踏まえた忍耐強い運用、リスク管理の実践(リバランス等)、対象資産の特性・注意点を熟慮した運用、運用体制の整備・確立など。 

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