SGネクスト:活動報告
日時 2023年09月09日(土) 15時30分~17時30分(所要時間:02時間00分)
開催場所 四谷地域センター 11F 集会室4
テーマ 「マイホーム断念世代のワンルームマンション投資」を資産運用として再考する
講師 長崎 鉄美(ながさきてつみ)氏 /CFP
 SGネクストメンバー
課目名と
申請予定単位数
課目名
・不動産運用設計
単位数:2単位
参加人数 合計11名
コメント (引き続き、リアル会場開催を実施)
 ワンルームマンション投資の現状・問題点とマイホームとしてのマンション投資との比較による投資効果について解説。
 金融緩和以降、首都圏の不動産価格は高騰し続けており、マイホームを断念する若者世帯も増えていると言われている。一方、NISA導入の影響もあり、資産運用全体で20~30代の投資熱は急速に高まっていて、今後も継続拡大が見込まれる。この世代をターゲットに手の届く不動産投資とされるワンルームマンション投資業界は業績を大きく伸ばしているが、投資側の知識不足と業者側の情報提供不足に懸念がある。この世代にとって、ワンルームマンション投資での失敗はその後の人生に大きな禍根を残しかねない。
 ワンルームマンション投資業界は、メガバンクが融資を手控えていて、資金調達力・財務体質が弱いため事業リスクが高く、開発・融資で行政の規制も受けやすい。販売形態は、取扱金融機関が限られる提携ローン利用が前提で、年収500万円以上の20~30代のサラリーマンを主なターゲットとなっている。Web投資セミナーなどを利用したSNS経由での販売が中心。物件の特徴としては、25~30m2がメインで、原価が割高。海外投資家や富裕層は投資先として敬遠するので、個人投資家が主体となる。営業方法の実態として、安易なワンルームマンション投資を奨励する業者の説明では、首都圏のファミリーマンションの高騰を逆手に取ることで、マイホームの取得を支援する優遇制度についての説明が全くされず、節税効果のみが強調されていることが目立つ。
 資産運用の観点から、マイホームとしてのマンション投資(ファミリーマンション購入)と投資効果の側面から比較してみる。ファミリーマンション購入は住宅ローン完済後にローン負担はなくなるが、ワンルームマンション投資ではローン完済後も賃料収入以上の自己住居の賃料負担が残る。節税効果の点からみても、ファミリーマンションの住宅ローン控除の税額控除の方が、ワンルームマンションの損益通算による節税効果より一般的に大きい。売却時には、ファミリーマンション購入では居住用不動産の特別控除3,000万円があるが、ワンルームマンションでは特別控除は無く、短期または長期の譲渡税が課せられる。
 以上を踏まえてまとめると、首都圏のファミリーマンションは過去10年高騰を続けているが、取得から売却に至るまで税制や金利など諸制度に優遇があり、不動産投資という観点からも相対的にリスクが低い。半面、ワンルームマンション投資は、物件の選別、保有コスト、空室リスクなど相対的にリスクが高く、事業採算維持には不動産の高い知見が求められる。人生100年時代、賃貸費用の負担自体が長生きリスクとなる。マイホーム購入により、そのリスクが軽減され、不動産投資という観点からも優位性がある。長期的な視点で、今まで以上に物件選別には慎重さを求められるが、未だ再考に値すると言えるのでは。 

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