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2021年9月号(1)
資産運用
CFP®認定者 遠藤 功二

暗号資産に投資する際の注意点

 暗号資産はインターネット上で不特定多数の方同士が取引できる財産的価値のある資産のことで、以前までは仮想通貨という呼び名でしたが、資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)により暗号資産という呼び名に変更されました。この暗号資産を投資として活用してる人も多く、「儲けた」「損をした」という話をインターネット等でよく見かけるかと思います。
 そこで、今回はこの暗号資産に投資する際のメリット・デメリットについて紹介します。

暗号資産とは

 暗号資産は「仮想通貨」という名称だったことと、一部のお店で買い物ができるという性質から各国の中央銀行が発行する法定通貨(日本では円、アメリカではドル等)や、電子マネーと混同されがちです。しかし、暗号資産と中央銀行の存在は無関係にあるため、資産価値を裏付ける実体があるとはいい難く、法定通貨との交換レートは大きな幅で変動しています。なお、暗号資産は金融庁・財務局に登録された暗号資産交換業者で売買を行うことができます。

暗号資産に投資する3つのメリット

 暗号資産に投資するメリットの1つとして資産分散効果が挙げられます。暗号資産は株式や債券などの伝統的資産とは異なる理由で価格が変動します。そのため資産に組み込むことで分散効果が望めます。
この考え方は、資産をポートフォリオに組み込む時の考え方と似ています。

 2つ目のメリットは取引時間の自由度です。暗号資産は暗号資産交換業者のウェブサイト内で取引を行います。株式を売買する証券取引所と異なり暗号資産交換業者のサービス利用可能時間内であればいつでも売買を行うことができます。

 3つ目のメリットとして利便性が挙げられます。暗号資産は手軽に海外に送金することができます。法定通貨を銀行の窓口から送金する時には様々な手続きが必要な上、送金先口座への着金に時間がかかります。暗号資産であれば、銀行を介さずに送金することができるので比較的早く送金と着金が完了する傾向にあります。

暗号資産に投資する3つのデメリット

 暗号資産のデメリットの1つとして、株式や債券等のような伝統的な資産への投資で使うような投資判断基準が通用しないという点が挙げられます。法定通貨の場合は各国のインフレ率、金利、経常収支などの影響で為替レートが変動します。また、株式市場は景気や企業業績の影響を受けて変動しますが、暗号資産の場合は通貨によって変動要因が様々です。経済指標だけでは投資判断ができないので、交換レートの先々の見通しが立ちにくいというデメリットがあります。
 2つ目のデメリットは暗号資産の売却益は雑所得に分類されるため、利益が出た年には確定申告が必要になるという点です。暗号資産の取引でまとまった利益が発生すると、年間の所得が増加し所得税、住民税の納税額が増加してしまう可能性があります。

 3つ目のデメリットは、トラブルが発生する可能性が伝統的資産への投資よりも比較的高い傾向にある点です。暗号資産交換業者は、過去に経営破綻を起こしたり、資産流出事件を起こしたりしています。その度に各企業は経営上、運営上の管理体制の強化に努めていると思われます。また、金融庁も更なる利用者保護の強化を検討しています。しかし、暗号資産自体が比較的新しい投資商品ということもあるので、現在予測されていないトラブルが今後発生する可能性があることは否定できません。

暗号資産を取り入れた資産形成を検討する際には

 株式、債券、およびそれらを投資対象とした投資信託で投資をされている方が、暗号資産を1つの投資対象として取り入れるのは分散投資の観点では効果的です。暗号資産への投資により、まとまった資産を築いた方のエピソードが気になる、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、暗号資産に偏ったポートフォリオにすると予想外の出来事が起きた際に資産が大きく目減りしてしまう可能性があります。資産全体のバランスを考えた上で、暗号資産をどの程度保有するか検討すると良いでしょう。

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