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2021年8月号(2)
住宅・不動産
CFP®認定者 岩田 由利子

住宅ローン控除特例の見直し 1%ルールが変わる?

 マイホームの購入は、家計において高額な買い物です。購入にあたっては一般的に数千万円の住宅ローンを組みますが、家計への負担を軽減するための制度として住宅ローン控除特例があります。
来る2022年の税制改正ではこの住宅ローン控除特例の控除率などについて見直しが予定されています。
なぜ見直しされ、どう変わるのか、そしてこれからの住宅購入をどう考えればよいのかについて解説します。

住宅ローン控除特例とは

 正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンを借り入れて住宅を購入する場合に、取得者の金利負担の軽減を図ることが目的の制度で、要件を満たした住宅ローンの年末時点残高の1%が所得税額(控除しきれない分は翌年の住民税)から直接控除される仕組みです。
 例えば、3,000万円(35年ローン・金利0.5%と仮定)の借り入れについて2021年1月から返済を開始した場合、仮に年末残高は約2,900万円として、その1%の約29万円が税額控除されます。
 国税庁「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)/No.1213」

なぜ見直しされるのか、その背景とは

 2016年1月末に日本銀行がマイナス金利政策を導入して以降、住宅ローンの金利は低水準のまま推移しています。住宅ローン控除特例が創設された1986年3月時点での旧住宅金融公庫の融資基準金利5.25%に対して、今や1%を下回っているような状況です。例えば、3,000万円(35年ローン・金利0.5%と仮定)の借り入れで試算した場合、支払う利息額は約15万円になり、住宅ローン控除額約29万円はそれを上回り、金利負担の軽減どころか、いわば「得をしている状態」となっています。実際、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れている人の割合が約80%であることがわかっています。結果的に、住宅ローンを組む必要がないのに住宅ローンを組む動機付けになったり、住宅ローン控除特例の適用期間が終了するまで住宅ローンの繰上返済をしない動機付けになったりする可能性があります。控除に関わる一部の費用は国費によることから、現行制度が国民の納得できる必要最小限の特別措置になっているか検討するよう会計検査院から指摘を受けたことが、見直しの背景にあります。
 引用・参考:会計検査院「平成30年度決算検査報告の概要」より

見直しの内容とは

 この指摘を受けて、2021年税制改正大綱において、「住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を2022年税制改正で見直す」と明記されました。想定されるのは、以下の2つです。
①控除額のあり方:年末残高の1%の額と支払利息額を比べて、どちらか低い方を控除額とする
②控除率のあり方:控除率1%と住宅ローンの借入金利を比べて、どちらか低い方を控除率にする

 いずれにしても、支払っている利息額以上の控除はなくなる方向性ですが、あくまでもこれからの検討事項ですから、2021年12月中旬頃に公開される2022年税制改正大綱に注視してください。

これからの住宅購入をどう考えるか

 住宅購入を計画している方にとっては、現行制度における「得をしている状態」での税額控除のメリットは制度が変わる前に購入をしたくなる動機になりますし、すでに、早い住宅購入を勧められているケースもあると思います。しかし、留意する点は、この税額控除は10~13年間の期間限定であり一生において適用されるわけではないということです。期限に迫られ、焦って住宅購入をするのは避けましょう。
 まずは、目先の損得に捉われることなく、住宅ローンを払いながらも子供の教育資金はしっかり確保できるのか、自分たちの老後資金の準備も並行して進められるのかなど、家計全体を中長期視点で考えて総合的なマネープランを作ることが先です。どのタイミングで住宅購入することが家計にとって最善なのか、といった視点も大切にしていただければと思います。

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