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2020年8月号(2)
住宅・不動産
CFP®認定者 小柳 祥子

住宅ローン 一括返済、コツコツ返済、どっちがお得?

 住宅ローンでは同じ金額を借りたとしても、返済方法によって、将来の返済額や家計に及ぼす影響が異なってきます。今回は返済期間に焦点を当てて、一括返済とコツコツ返済のどちらがお得なのかを考えていきます。

一括返済のメリット

 一括返済の最大のメリットは総返済額が少なく済むことです。返済している間は利息を支払い続けるため、期間が長いほどトータルでの返済額が膨らみます。一括返済してしまえば、支払い利息が軽減されるだけでなく、ローンの支払いから解放され、心情的にも楽になります。
 また、借入れ時に保証料を一括で支払った場合、残期間に応じた保証料が返還されます。ただし、返戻率や手数料は一律ではないため、各金融機関に確認が必要です。

一括返済は本当にお得?!

 それならできるだけ早いうちに住宅ローンを一括返済することが一番お得に感じますが、そこには考慮すべき点がいくつかあります。

1.住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

 住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除を受けている場合、借入れ当初10年間(消費税増税による特例措置適用の場合には13年間)は、年末ローン残高の1%が所得税や住民税から控除されます(上限あり)が、適用期間内に一括返済をしてしまうと、その分の控除がなくなります。特に1%未満の低金利で借りている場合、支払う利息より控除される税金の方が多く、不利になる場合があります。ただし、実際にどちらが有利になるかは、手数料や支払っている税額にもよります。

2.期限の利益

 「期限の利益」とは、期限の到来まで債務の履行をしなくてもよいという債務者の利益のことです。そのため、一括返済は「期限の利益」を自ら放棄することになります。
 住宅ローンの場合、毎月の返済を延滞しない限り、手元の残りの資金の使い道は自由です。しかし、一括返済すれば、返済に充てた資金は戻ってこないため、予定外の出費があった場合、他から借金することにもなりかねません。住宅ローンは他の消費者ローンよりも金利が優遇されている場合が多く、仮にカードローンや教育ローンなどを利用した場合、結果として住宅ローンより多くの利息を支払うことになってしまいます。

3.団体信用生命保険(団信)

 住宅ローンを借りる場合、一部を除いて団体信用生命保険(団信)に加入しなければなりません。
 もし団信の加入者(被保険者)が返済期間中に死亡したり病気などで所定の状態になった場合、団信でローンが返済されますが、それとは別に生活資金は必要です。ローンは残高の多寡に関わらず返済されるため、手元に資金が残りますが、一括返済で同じ状況になった場合、手元の資金がない、または少ないため、生活に困る可能性もあります。

4.機会の損失

 最善の選択をせずに得られるべき利益が得られないことを「機会の損失」といいます。
 例えば、余裕資金を一括返済に充てず、住宅ローンの金利より高い利回りで運用できれば、一括返済による利息軽減効果よりも得られる利益が多くなります。現在のような住宅ローンの低金利下では、有効な選択肢といえますが、運用次第では損失を抱えることもあるため、慎重に判断する必要があります。

お得な返済方法とは?

 住宅ローンは長期に渡るもののため、その間の金利情勢や発生する出来事をすべて予測し、前もってどちらの返済方法がお得か断定することは困難です。確かに一括返済によるメリットは大きいですが、子供がまだ小さく今後の生活費や教育費が増える、退職金以外に貯蓄がなく老後が心配である、といった不確定要素が強い場合、いざという時に手元資金があることはとても大切です。
 キャッシュフロー表などで今後の収支予定を十分に検討し、自分たちのライフプランに合った返済方法を選択することをおすすめします。

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