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2019年8月号(1)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 平田 純子

孫への教育資金贈与

 人生で築いた資産を次世代に引き継ぐ方法として、代表的な方法が相続と生前贈与です。引き継ぐ自分の思いを相手に直接届けたい、相手の喜ぶ顔が見たい、引き継いだ資産が役に立っている状況を実感したいとなると、相続より生前贈与という方法が適しています。また、まとまった資産を保有している方にとっては、相続対策として有効に活用したい対策の一つでもあります。ここでは、「かわいい孫の将来のために資産を活用してほしい」との思いが叶う『教育資金の贈与』について、そのポイントをみていきましょう。

注目したい期限付きの大きな非課税枠

 何らかの方法で資産・資金を得た場合、付随して発生するのが納税義務です。贈与税は、相続税に比べ税率が高く、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)のような一律のまとまった非課税枠もありません。しかし、生前贈与には、次世代の生活や将来に役立つ目的での贈与に限り、期限付きで認められている大きな非課税枠があります。その一つが『教育資金の一括贈与時の非課税制度』です。その非課税の額は、受贈者1人あたり1,500万円です。この制度、当初は2019年3月までとの期限付きの制度でしたが、2021年3月まで延長されることが決まっています。一方、その制度利用については様々な適用条件や活用の段取りがありますので注意が必要です。

非課税で大きな資産を得る(譲る)って、意外に大変!?

制度活用の段取りとしては、
1.銀行や信託銀行で教育資金口座を開設し、資金を預け入れる
2.資金の払い出しには、金融機関へ書類(領収書など)の提出が必要(提出期限あり)
3.契約終了時(※)には、口座残高やこれまでの払い出し理由により課税や申告手続きが必要
(※)受贈者が30歳に達した時、死亡した時、または口座の預金がゼロになった時

適用となる教育資金とは、
1.学校などに直接支払われるもの(幼稚園~大学院、専修学校や各種学校、保育園など)
2.学校外に支払われるもの(学習塾、野球やピアノなどスポーツ・文芸活動の指導料他、通学定期代や留学などの渡航費など)

ただし、制度適用の条件で注意が必要なのは、
1.受贈者の前年の所得が1,000万円以下であること
2.23歳以上の受贈者に係る教育資金の範囲から学校以外の習い事等の費用が除外(教育訓練給付金は適用)
3.贈与者の死亡前3年以内に非課税措置の適用を受けた場合、その死亡日に残っている残額が相続税の課税対象となる(受贈者が23歳未満であるなど課税対象外の条件あり)
4.受贈者が30歳到達時点で、学校等に在学中や教育訓練給付金の支給対象の教育訓練を受講している場合は、最長40歳まで適用期間延長(2019年7月1日以降に受贈者が30歳に達する場合について適用)

 いろいろ面倒そうだなと感じた人もいらっしゃるかもしれません。しかし、資産を譲る親世代にとっても、また、人生の三大支出と言われる教育費負担が大きく軽減される子世代にとっても、手続きや適用条件に注意を払いながら積極的に活用したい制度であると思います。

資金を出す側と受け取る側へのアドバイス

 かわいい孫の将来のために教育資金の援助を実行する前に、是非ご自身の老後資金を今一度見直しましょう。仮に100歳まで長生きした場合に備え、まずはご自身と配偶者の生活資金を確保したうえで援助額を決定することが大切です。張り切って資金援助した後、ご自身の家計が苦しくなっては元も子もありません。一方、資金の援助を受けた方へのアドバイスとしては、是非、教育費負担が軽減された恩恵額を日常利用のお財布や口座とは分けて管理し、更なる将来のために蓄えておきましょう。それこそが、真の意味での価値ある資産の引き継ぎ方だと私は考えます。

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