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2019年3月号(1)
資産運用
CFP®認定者 橋本 秋人

不動産運用のメリットとリスク

 資産運用には、金融資産運用の他に不動産運用があります。
 金融資産運用と同じく、不動産運用においても、リスクとリターンという考え方があります。正しい知識と正確な情報をもち、不動産運用のメリットとリスクを十分理解することが大切です。
 本コラムでは、不動産運用を考えるときに、最低限押さえておかなければならない基本的な知識についてお伝えします。

不動産運用のリターンとは

 一般的に、不動産運用では2種類のリターン(投資に対する収益)を目的としています。
 ひとつは不動産から得られる賃貸収入で、インカムゲインともいいます。例えば、アパートを賃貸することにより、入居者から毎月賃貸収入を受け取ることができます。
 もうひとつは不動産を売却することで得られる売却益で、キャピタルゲインともいいます。不動産の購入額よりも高い価格で売却ができれば値上がり益を得ることができます。
 ただし不動産価格は下落する可能性もあるため、必ずしも売却益が得られるということではなく、売却により損失を生じる場合もあります。特にわが国では、少子高齢化、人口減少が進み、今後不動産価格の値下がりが予測されるため、売却益に比重をおいた不動産運用には大きなリスクを伴うと考えた方が良いでしょう。

不動産運用のメリット

 不動産賃貸を行う場合、一定の入居率が維持できれば、安定的な賃貸収入を得ることができるため、副収入として、また老後は自己年金としての役割が期待できます。
 その他に不動産運用のメリットのひとつとして、相続税対策の手段になるということがあります。相続税対策としては、相続税額を下げる効果と、相続税の納税手段をつくる効果が期待できます。
 アパートや貸店舗などの賃貸用の建物は「貸家」、土地は「貸家建付地」として自己用の建物や土地よりも評価額を下げることができます。また借入をしてアパートを建設する場合、借入額は債務として相続財産から差し引くことができるため、結果的に相続税額を下げる効果があります。
 アパートの賃貸収入を、相続人が相続税を納付するための資金として利用する方法もあります。この場合、賃貸の収益を親から子へ生前贈与する、アパートの管理法人をつくり子へ給与として支払うなどの方法があります。
 さらに不動産運用の大きなメリットとして、管理に手間がかからないことがあげられます。
 管理を不動産会社に任せることにより、故障修理の手配、入居者との折衝やトラブル対応などを管理会社が行ってくれるので、賃貸経営に関してオーナーが時間を拘束されることはあまりありません。そのため不動産運用は副業として適しています。

不動産運用のリスク

 メリットの反面、不動産には下記のようなさまざまなリスクがあります。
・空室リスク
・滞納リスク
・賃料下落リスク
・金利上昇リスク
・修繕リスク
・事件事故リスク
・災害リスク
 なかには発生すると大きな損害を被るリスクもあります。
 これらのリスク発生を0にすることは困難ですが、リスクの発生率を低く抑える必要はあります。さらにリスクが発生した場合に被害を最小限に抑えるためのリスクマネジメントも重要です。
 例えば、最近頻発している災害リスクの発生を抑えるためには、ハザードマップや現地調査などで地盤の強さや洪水などの危険度を調べ、リスクに応じた対応をします。また災害リスクの可能性が著しく高い立地では不動産運用を行わないという判断もあります。地震保険や空室補償保険への加入もリスク対応として重要です。また、滞納リスクに対しては、家賃保証会社や信販会社による保証を付けることで安心できます。
 その他にも空室リスクに対しては信用のおけるサブリース(※)会社の利用、修繕リスクに対しては、十分な修繕引当金の計上など、それぞれのリスクに応じた対策を講じておきます。
 何よりも重要なことは、計画段階からさまざまな状況を想定した事業計画を作成し、賃料下落や金利上昇などにも事業が耐えられるかどうかを見極めることです。不動産運用は個別性も大きいので、不動産運用にくわしいFPなどの専門家に相談することも大切です。
 (※)サブリースとはオーナーが建築した建物の賃貸部分をサブリース会社が一括して借上げ、第三者(入居者)に転貸する方式をいいます。

まとめ

 最近は、シェアハウス問題、サブリースのトラブル、不正融資、大手メーカーによる施工不良問題など、不動産投資に関して何かとネガティブなニュースが目につきますが、不動産運用は正しく行うことで有効な資産形成の手段のひとつとなります。
 そのために不動産運用におけるリテラシーを高め、十分な検討とリスク対策を行うよう心がけてください。

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