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2018年8月号(2)
住宅・不動産
CFP®認定者 近藤 喜隆

夫婦で行う住宅ローン「ペアローン」知っておきたいメリット・デメリット

 近年、共働き夫婦の間で、夫(妻)の収入だけでなく、配偶者の収入も合算して住宅ローンを組む「ペアローン」を採用する世帯が増えているようです。購入者自身が興味を持ち、積極的にペアローンを検討するケースもありますが、中には金融機関や住宅販売会社からの提案で、なんとなく組んでしまう場合も少なくありません。ただ住宅ローンは金額も大きく、期間も長いです。今後のライフプランにも大きく影響しますので、この機会にペアローンのメリット・デメリットを確認しておきましょう。

ペアローンとは

 ペアローンとは、一つの物件(マイホーム)に対し、2本の住宅ローンを組むことを言います。通常は、一つのマイホームに、1本の住宅ローンですが、ペアローンは、夫、妻各々でローンを組むイメージです。対象は一つのマイホームなのですが、そこに全く別契約の住宅ローンが2本存在している状態、それがペアローンなのです。

ペアローンのメリット

 ではそのメリットとは何か。最も大きいのが、借入額を増額できるという点です。夫(妻)一人では、夫(妻)の年収に見合った借入額しか組めませんが、ペアローンでは、配偶者の年収分に見合ったローンも別途上乗せできるのです。配偶者もフルタイムで働いている場合は、その効果は大きいでしょう。
 それと併せ、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が、夫婦二人分適用できるのも魅力です。現在、一般住宅であれば、年間最大40万円(借入金年末残高4,000万円×1%=40万円)の税額控除となりますが、それが夫婦二人で2本分、つまり最大80万円(40万円+40万円)となるのです。この税額控除に魅かれ、ペアローンを積極検討する共働き夫婦が多いようです。また所有権に関しては、夫婦各々の出資額に応じ、持分登記することとなります。

ペアローンのデメリット

 では逆にデメリットは何か。上記、メリットで挙げたローン借入額の増額ですが、これは裏を返せば、借り過ぎというリスクもはらんでいるのです。特に妻が出産育児等で、現在の収入が大きく落ち込んだ場合、それまで同様の返済は難しくなることも考慮しなければなりません。また団体信用生命保険については、夫婦各々で加入はできますが、いずれかが亡くなった場合、免除されるローンは、あくまでその亡くなった方の分のみとなります。例えば、夫死亡時、免除されるのは夫のローン分だけで、妻のローン分は丸々残ることになりますので注意が必要です。また夫婦で別契約となりますので、契約書も2本分必要ですし、手数料や印紙代等の費用も二倍となります。さらに将来、借り換えをしたい場合は、夫婦各々に借り換え審査が必要となります。その場合、夫の審査は通ったとしても、収入の減った妻は審査が通らないということも有り得るのです。

まとめ

 以上、ペアローンのメリット・デメリットを見てきました。現在の収入ベースでの共働きが続かないことも想定し、堅めのローン設定が求められるでしょう。確かに住宅ローン控除は2本分受けられますが、夫(妻)が単独でフルに借りる場合と、夫婦合算でも控除額総額があまり変わらないケースもあります。それらをしっかりと認識の上、金融機関や住宅販売会社に勧められるがままではなく、購入者自身で主体的に判断するようにしましょう。

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