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2018年5月号(1)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 柴沼 直美

実は難しくない相続手続き(基礎)

 親が年老いてくるにつれて気になる相続。いつか来ることはわかっていても日頃から相続について真剣に考えることは先延ばしになりがちですし、毎年恒例の確定申告などとは違って「経験を積んで慣れる」ことは難しいものです。それゆえ、いざ相続が起こったときには何から手を付けて良いのかわからなくなりますが、予め準備しておくことで、あとの処理がスムーズになったり、日ごろから意識しておくだけで慌てずにすむこともあります。
 相続手続きは、大きくわけて「相続人の確定」と「財産の洗い出し」の2つの段階をクリアにすれば解決します。今回は、その第1段階である、相続人の確定を中心にお伝えしていきます。

1.相続が発生するタイミング

 相続が発生するのは「死亡」という事実があってからです。いざそのような場面に出くわしたとき、「死亡診断書」を役所に提出することを覚えておきましょう。死亡がご自宅なのか病院なのか、突然死なのか通常死なのか、によって分かれますが、どんなケースであっても死亡診断書または死体検案書を交付してもらいます。この書類は死亡届と一体になっていて、死亡の事実を知った日から7日以内に役所に提出してはじめて火葬や埋葬の手続きが動き出し、相続が発生することになります。

2.相続手続きの第一段階:相続人の確定

 相続にあたって、一番重要ですが、もっとも時間のかかる作業が法定相続人を確定させることです。亡くなった人にかかる手続きには相続だけでなく、社会保険関係など「相続人全員の合意」がいたるところで求められます。

 法定相続人を確定するには、出生から死亡までの戸籍謄本を調べます。亡くなった人の最終本籍地から出生までの戸籍を市町村に申請し、子どもの数・名前・養子の有無を調べ、子どもがいない場合は父母・祖父母と遡り、それでも該当者がない場合は兄弟姉妹にまで範囲を広げます。最近は婚姻だけでなく、転勤等に伴い相続人の住所が日本中、時には海外にまで広がっていることが多く、場合によってはこの段階でかなり時間を取られることがあります。相続にあたっては相続人全員の戸籍謄本が必要になりますので、法定相続人が確定した時点で各自に取得申請しておいてもらうと良いでしょう。

3.相続人と連絡がつかない場合の対応

 法定相続人があらたに見つかったものの、連絡がつかない場合などは「不在者財産管理人選任の申立書」を不在者や申立人の戸籍謄本と不在の事実を証明する資料等と共に家庭裁判所に提出し、弁護士や司法書士など、法定相続人と直接利害関係がない人を選出してもらいます。
 この作業は確かに面倒ですが、あらかじめ準備することが可能です。意識しておくだけでもずいぶんと負担感は和らぐものです。

4.相続人確定後の流れ

 相続人が確定できたら、あとは財産の洗い出しになります。ここでも問題は発生します。当初は「被相続人の財産はこれが全て」と思って税務署に申告書を提出してから、新たに別の相続財産が見つかるというケースです。一度でスムーズに終わるほうが珍しく、当初の財産と同様に見つかった都度遺産分割協議を行うことになります。何度も協議をすることになるので、亡くなった人が存命中から整理しておくことが理想です。整理できていない場合はこのようなケースが起こることを想定して、最初の遺産分割協議書に「申告後に見つかった遺産については長男が相続する」などといった扱いを記載しておくのがお勧めです。

 繰り返しになりますが、相続の手続きは、相続財産を受ける人(法定相続人)を確定させることが何より大事で、そこさえクリアすれば峠は越えたようなものです。あらかじめ準備できるので、早いうちから意識しておくと安心です。
 なお、相続は税金や法律が関わって難しいところもあるので、相続に詳しいFPや税理士などの専門家に相談することも検討してみましょう。

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