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2018年4月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 小林 美智子

若手社会人が知っておきたい給与明細の見方

 真新しいスーツに少し緊張した横顔。春はあちらこちらで新社会人の姿を見かけます。
経済的に支えられていた立場から、自分で働いて給料をもらう立場へ。一人前になったようで誇らしい気持ちになりますね。
 社会人として経済的に自立して生活していくためには「自分のお金」について知ることが大切。会社員や公務員は「給与明細書の見方」を知ることがその第一歩になります。
 今回は、若手社会人が知っておきたい給与明細書の見方と給与計算の基本についてお話しします。

1.給与明細書の見方と給与計算の基本

 給与明細書には様々な項目が記載されています。どこを見ればよいか迷ってしまいますが、最初に「総支給額」「総控除額」「差引支給額」の3つを探しましょう(明細書によって名称が異なります)。
 そして、これらを組み合わせた【総支給額】-【総控除額】=【差引支給額】が給与計算の基本となります。
 次に、支給と控除の各項目について見ていきましょう。

2.自分の稼ぐ力を知る【支給】

 支給項目は、一般的には「基本給」と「諸手当」で成り立っています。
 基本給は給与の基本部分で、多くの企業ではボーナスや退職金の計算をこの基本給をベースにしています。まずは自分の基本給がいくらなのか把握しておきましょう。
 次に、諸手当とは基本給に上乗せされる給与のこと。役職手当、資格手当、家族手当など原則として毎月金額が固定の手当と、時間外手当、深夜手当、休日出勤手当など勤務状況によって変動する手当があります。
 普段のやりくりは、残業代など変動する手当をあてにするよりも、毎月決まって入ってくる固定給(基本給+金額が固定の諸手当)をベースに考えたほうが賢明です。
 資格手当や家族手当、住宅手当など今後のキャリアプランやライフプランに関係がある手当は、どんなときに支給の対象になるのか、支給要件や期間を確認しておくとよいでしょう。
 また、上記以外に通勤定期代等が給与と一緒に振り込まれた場合にも、給与明細書に記載されます。

3.自分を守る社会保障制度を知る【控除】

 控除とは「金銭等を差し引く」という意味です。給与における「控除」は、主に社会保険料と税金を指します。これらは企業が従業員の給与から天引きして納めることが法律で定められています。

(1)社会保険料
 社会保険は、病気やケガ、出産、老齢、障害、死亡、失業などさまざまな生活のリスクに対して、一定の給付を行うことで生活の安定を図るセーフティーネットです。
 企業を通して加入することが義務付けられており、社会保険料を支払うことで給付を受けることができます。また、企業によっては健康保険に独自の上乗せ(付加給付)をするなどさらに手厚い給付となっている場合もあります。

<社会保険料と受けられる給付の例>
● 健康保険料(医療費の自己負担が3割・高額療養費・傷病手当金・出産育児一時金など)
● 厚生年金保険料(老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金など)
● 雇用保険料(失業保険・教育訓練給付金・育児休業給付金・介護休業給付金など)
● 介護保険料(一定の要介護状態になったときに受ける介護サービス)※保険料負担は40歳以上

 保険というと、生命保険や医療保険など民間の保険会社を思い浮かべる人が多いと思いますが、生活のリスクへの備えは、まず加入している社会保険で受けられる公的保障をベースに考えることが基本です。さらに、勤務先独自の企業保障があればそれを加味し、そのうえで不足部分を自助努力で備えるという順番で考えましょう。

(2)税金
● 源泉所得税
 支給合計から社会保険料を控除した金額(課税対象額)をもとに計算されます。毎月引かれるのは概算の税額で、年末調整で本来の税額との過不足が精算されます。
● 住民税
 前年の所得をもとに計算され、その年の6月から翌年の5月まで毎月の給料から天引きされます。
 新入社員の場合は2年目から天引きが始まります。収入が変わらなければ1年目よりも手取りは少なくなるので、あらかじめ想定しておきましょう。

4.自分の身の丈を知る【差引支給額】

 総支給額から総控除額を差し引いた「差引支給額」がいわゆる手取りで、日々のやりくりに使えるお金になります。仮に初任給が額面で20万円だとすると、手取りは約17万円になります。ここから生活に必要なお金を支払い、まとまった支出や将来に備えるための貯蓄をしていきます。
 給与振込口座の開設時にクレジットカードの申込みを勧められる人も多いと思いますが、まずは毎月の手取りの範囲内でどのくらいのお金を使い、貯蓄はどのくらいできるのか把握し、自分のお金の使い方、貯め方をデザインしていきましょう。

5.まとめ

 若手社会人にとって最大の財産は時間です。自分のお金について早く知ることはそれだけで大きなアドバンテージになります。まずは自分の稼ぐ力を知り、社会保障制度や税制を理解しましょう。
 限られたお金の中のやりくりは大変かもしれませんが、身の丈の中で生きたお金の使い方、貯め方を身につけることができれば、人生の選択肢は増え、理想のライフプランを実現することができるでしょう。

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