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2018年3月号(3)
ライフプラン
CFP®認定者 尾上 好美

奨学金制度の活用について

 ライフプランに見直しや修正はつきものです。
 特に、子どもの進学については、親が期待していた通りにはいかないことがあり、教育資金には将来の本人の希望や進路に応じた対応が必要になります。
 万が一、教育資金が足らなくなってしまった時には、“奨学金“、“公的教育ローン”、“民間の教育ローン”などの調達方法がありますが、現在は大学生の約半数以上が奨学金を利用して進学している(※)状況にあり、教育資金は奨学金で調達するという考えが広まっています。
 一方で、奨学金の延滞率の増加(※)は、日本の高等教育の課題の一つになっています。

 奨学金を活用し教育資金を補う場合に、気を付けていただきたい考え方をまとめます。
※日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」結果より

(1)奨学金制度とは?

 厳格な意味でいうと、奨学金制度とは、学業成績等が優秀な生徒・学生に対して、修学を支援する目的を担っており、返済義務がない給付型タイプに定義づけられていました。
 ただし、成績要件の審査基準が厳しく募集枠が少ないため、採用の倍率が高く一部の成績優秀者のみ利用できる選抜型の制度でした。
 現在では、このような本来の定義に加え、学生に対する経済支援策として奨学金を捉えることにより、教育資金が充分ではない世帯に対象者を広げ、奨学金は無利子ないし低金利を伴う貸与型が主流となっています。国や市区町村、公益機関、民間団体など、様々な機関で、給付型や貸与型の奨学金制度を設けていますが、審査基準は、進学後の成績などやる気を重視し、家計の所得制限を必須条件とするなど経済的困窮対策とする位置付けが目立ってきています。

(2)日本学生支援機構の奨学金は、経済支援をさらに強化

 平成29年度以降、多くの学生が奨学金を利用する独立行政法人日本学生支援機構では、経済的に厳しい世帯に対して、進学の後押しを目的とする返還不要の給付型奨学金を増設しました。さらに、一定の経済状況にある世帯の学生には、成績基準を実質的に撤廃するなどして無利子奨学金の対象者を増やすなど、経済的支援をさらに強化する方向で事業を展開しています。また、卒業後の所得に連動して返還額を調整できる「所得連動返還型奨学金制度」、就職が思うようにいかずに返還が困難な状況にある低所得者を対象に、返還月額を1/3に減額する「減額返還制度」など、返還負担軽減策を大幅に拡充しています。

(3)奨学金は教育資金のために利用する

 このように、経済的に困っている世帯にとって、奨学金は利用しやすくなったわけですが、このところ特に進学や進級に必要な教育資金に充てるために奨学金を利用するという大前提が揺らいでいると感じています。

 最近のご相談事例の中に、生活費と同じ口座を奨学金の振込み指定にしてしまったために、無意識的に奨学金を生活費の一部として使ってしまって、学費の納入や授業料の支払ができずに、卒業証書をもらえずにいるという奨学金貸与生の相談がありました。
 現在、その方は、進学して学んだ分野に関係のないアルバイトで生活しており、進学時に思い描いていた卒業後の自分の姿とはかけ離れといるとのことでした。今の収入では奨学金を返しながら生活するのが難しい状況です。
 この状況は、進学した本人の努力が報われないことはもちろん、奨学金の融資機関、学校機関など奨学金関係者においても奨学金を借りたことが負の連鎖となり、今後の制度存続に悪影響を招くことは否定できません。

 このようなことがないように、奨学金は将来返す義務のある“預り金”という認識を強め、奨学金と生活費の口座は別に管理することをおすすめしています。
 その学生本人の返還に対する意識も大切ですが、何のために奨学金を借りるのかという根本的な問いかけを学生自身が意識しているかどうかが大切です。

 毎月の返還金は数万円でも、10年以上その金額を返し続けていくという負担は想定以上であり、将来の仕事の選択、結婚や子育てなど、奨学金を借りた本人のライフイベントへの影響を忘れないようにしていただきたいと思います。

(4)奨学金は自己投資のために使う意識を

 奨学金で進学することにより、専門技能や技術の獲得など能力を伸ばせば、有望な勤務先に就職し奨学金の返還が開始した後も安定した収入が期待できます。そして、奨学金によって身に着けた能力で社会に貢献する人材が増えれば、奨学金は社会にとって未来への投資となります。
 このような、本来の奨学金制度の意義が実現できるように、少なくとも、学生本人が奨学金を将来への自己投資に使うという意識を持っていただきたいと思います。

 教育ローンは、保護者が子どもの教育資金のために借りる借金ですが、貸与型奨学金は、将来にわたって返還義務を学生本人が背負おう借金です。

 奨学金は借りられるから借りるではなく、最終的には返還義務を誰が負うのか、そのことが将来に与える影響を、学生本人を交えて家族でよく考えてから、進学を決定していただきたいと思います。

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