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2015年2月号
税制・相続・贈与
ファイナンシャル・プランナー 福島 えみ子

遺言書にかかるお金

2015年1月からの相続税改正に伴い、相続や遺言に関するご相談が増えています。なかでも、「公正証書遺言が安心のようだけれど費用がかかるとのこと。具体的にはいったいいくらですか?」というご質問は以前からよくお受けします。そこで、今回は、遺言書にまつわる費用についてまとめてみました。

まず、遺言書には3つの方式があります。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
  • 本人が自筆で作成
  • 本人の自署・日付・捺印が必要
  • 実際に相続が発生したときには家庭裁判所の検認手続が必要
    (民法1004条1項)
  • 公証人と証人2人の立会いが必要
  • 公証人の前で、遺言を口述し、それを公証人が筆記し、遺言者と証人に読み聞かせる。
  • 遺言者及び証人2人の署名・捺印
  • 公証人の署名・捺印
  • 本人が遺言書を記し自署・捺印のうえ、それを封筒に入れ、さらに遺言書捺印と同じ印鑑で封筒を封緘をする。
  • 公証人と証人2人の前に提出、遺言書である旨、氏名・住所を述べる。
  • 公証人が日付・遺言書である旨・遺言者の氏名・住所を封紙に記載し、さらに遺言者・公証人・証人2人が封紙に署名・捺印
  • 実際に相続が発生したときには家庭裁判所の検認手続が必要
    (民法1004条1項)

自筆証書遺言とは?

一番手軽に作成できる「自筆証書遺言」は、自筆で紙に遺言をしたためるものです。費用はせいぜい紙代位でしょうか。ただし、自筆証書遺言では相続が開始した後、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければ、勝手に開封して遺言執行手続きに移ることができません。この手続きに下記表のような費用がかかります。

遺言書検認手続き(家庭裁判所)

家庭裁判所への申立手数料(収入印紙)

800円
家庭裁判所への申立手数料(予納郵券)
  • 東京家庭裁判所・法定相続人3人の場合
    (※裁判所・相続人や遺贈者の数によって異なりますのでご注意ください)
    82円切手×9枚
738円
添付書類として、遺言者・相続人の戸籍謄本等
  • 例として配偶者と既婚の子供2人の場合で改製原戸籍をはさむ場合
    戸籍謄本 3通
    改製原戸籍 3通
3,600円

遺言検認済証明書 1通150円

150円

2015年1月時点

なお、表にはありませんが、検認期日の交通費も考えておくとよさそうです。検認を申し立てる家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。もし申立人が遠隔地居住なら、申立は郵送するとしても検認当日は立合い必須です(申立人以外は必ずしも立合いする必要はありません)。
その場合、例えば九州で申し立てるなら、長男だからと東京の長男が申立人になるよりも、近居の次女を申立人にするのも、費用面からは1つの選択です。

公正証書遺言では?

「公正証書遺言」の費用については、記事やコラム等に“公証役場の手数料がかかる”とのみの記述されているのを見かけます。この“手数料がいくら?”が明示しづらいのは、遺言の対象となる相続財産の価額や相続人・受遺者の人数によりその手数料が異なってくるためです。今回は、“例えばいくら?”の目安のため、下記の条件を一例として算出してみました。

【設例】

  • 相続人
    :3人(配偶者と既婚の子供2人)

    ※ “既婚の子供”という条件は、提出する戸籍謄本の費用算定のため。

  • 相続財産

    :5,000万円

戸籍謄本等費用
戸籍謄本 450円
除籍謄本 750円
改製原戸籍謄本 750円
戸籍の附票の写し 300円

(地方公共団体の手数料の標準に関する政令より)

手数料は、下記「公証人手数料令」表をもとに算出されます。注意すべきは、遺言でそれぞれに相続させる財産の価額ごと、そして相続人や受遺者それぞれにおいて個別に算出し、それを合算するという点です。

公証人手数料令

・相続の目的の価額と相続人の人数による

◆ 法律行為に係る証書作成の手数料
(目的の価額) (手数料)
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 4万3,000円に5,000万円までごとに
1万3,000円を加算
3億円を超え10億円以下 9万5,000円に5,000万円までごとに
1万1,000円を加算
10億円を超える場合 24万9,000円に5,000万円までごとに
8,000円を加算
遺言加算
(全体の財産が1億円未満のとき)
11,000円(1件につき)
証人報酬(2人)
5,000~10,000円(1人につき)
用紙手数料
原本(公証役場に保管)
4枚超のとき1枚につき250円加算
正本(遺言者交付)
1枚250円
謄本(遺言者交付)
1枚250円
公証人の出張
目的の価額に応じる手数料50%加算
日当 1日20,000円・半日10,000円
交通費実費

(公証人手数料令 別表より)

冒頭の設定で、配偶者に3,000万円、子供2人に1,000万円ずつを相続させる遺言をしたとします。「公証人手数料令」表の目的の価額からそれぞれの手数料を算出すると、下記のとおりです。

配偶者 23,000円
子供1 17,000円
子供2 17,000円
合計 57,000円

これに全体の財産が1億円未満のときは遺言1件につき「遺言加算」が11,000円加算され、さらに遺言の用紙代についても加算されます。そして公正証書遺言には推定相続人や利害関係人以外の証人2名が必要ですから、証人への礼金も場合によっては必要です。これら費用を合計すると、下記表の金額となります。

◆ 目的の価額による手数料 57,000円
◆ 遺言加算 11,000円
用紙手数料
  • 全体で5枚と仮定
原本(公証役場に保管) 250円
正本(遺言者交付) 1,250円
謄本(遺言者交付) 1,250円
公証役場への支払い合計 70,750円
【付随する費用】
◆ 提出書類として(但しコピー可)
  • 印鑑証明書(但し市町村により手数料異なる)
300円
  • 戸籍謄本
    (相続人・遺言者のもの。改製原戸籍までは多くは不要)
1,350円
  • 相続財産に土地建物がある時は
    不動産登記簿謄本
    土地・建物 各1通800円
1,600円
証人報酬(2人)
  • 1人につき5,000と仮定
10,000円
合計 13,250円

秘密証書遺言の場合は?

最後に、公証役場で行うものの、遺言の中身は封印されている「秘密証書遺言」の場合です。相続対象財産の価額は封印されて知り得ませんので、財産価格による手数料の算出はできず、公証役場でかかる費用としては、「遺言加算」の11,000円と証人2人の報酬のみになります。
そして秘密証書遺言では、家庭裁判所の検認手続きが必要となりますから、先程自筆証書遺言で挙げた検認手続きの費用が加わります。

遺言書は家族や残された人に向けてのラブレターともいうべき、意思や想いを残す大切なものです。どの方法が自分にあっているのか?ぜひじっくりと考えて頂く一助になれば幸いです。

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