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2012年6月号
ライフプラン
ファイナンシャル・プランナー 中山 達雄

「成年後見制度」をご存知ですか。

これからの高齢社会、平均寿命はどんどん延び、老後の生活を楽しむ時間も長くなってきます。反対に、自分や親が高齢になって、認知症になったりして判断能力が衰えた時、自分の財産をどう守るのか、どのような介護サービスを受ければよいのか、などの心配・不安も増えてきています。このような時に強い味方になるのが成年後見制度です。

1.成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症、知的障害や精神障害などにより判断能力が不十分なため、財産管理や介護サービスの契約などをご自身で行うことが難しくなった人を、法律的に支援する制度です。

成年後見制度は、介護保険制度とともに2000年から始まった制度です。介護保険制度はどのようなサービスを受けるかをご自身で選び、契約するのが基本です。そのため判断能力の不十分な方が適切な契約をするために本人に代わって契約などの行為を代理する制度として、成年後見制度が制定されたわけです。

成年後見制度と介護保険制度はいわば「車の両輪」というわけです。

2.成年後見制度の種類

成年後見制度には、2種類あります。
ひとつは、本人の判断能力が衰えてから利用する「法定後見制度」で、もうひとつは、判断能力が十分あるうちに自分の意思に基づいて、自分の判断能力が不十分になった時の対応を契約で決めておく「任意後見制度」です。
また、法定後見制度には、本人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つに区分されます。

<成年後見制度の種類>

3.法定後見制度の内容

すでに判断能力が不十分な時に利用するのが法定後見制度です

(1)区分

本人の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つに区分されますが、その区分内容は下記のとおりです。

区分 状況 具体例
後見 自己の財産を管理・処分することができない。 日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要がある。
保佐 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。 日常的に必要な買い物は自分でできるが、不動産の売買など重要な財産行為や介護保険サービスの契約などは自分ではできない。
補助 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。 重要な財産行為は自分でできるかもしれない、できるかどうか不安があるので誰かに代わってやってもらった方がよい。

最高裁判所「成年後見制度における診断書作成の手引き」をもとに筆者作成。

(2)後見人の選任

法定後見制度を利用するには、本人・配偶者・家族等4親等以内の人が家庭裁判所に後見人を選任してほしいという申立てをします。4親等以内の親族がいない場合は、市町村長が申立てを行うことができます。

申立てを受けて家庭裁判所は適任な人を後見人に選任します。後見人には特に資格等はなく誰でもなれますが、申立てをした親族がなる場合(親族後見人)や弁護士、司法書士、社会福祉士、ファイナンシャル・プランナー(FP)等がなる場合(専門職後見人)、また一般の市民が第三者として後見人を務める場合(市民後見人)があります。

最近は、認知症高齢者の増加に伴い親族後見人、専門職後見人だけでは後見人が足りず、市民後見人の養成が急務となっています。

また、個人でなく法人が後見人になる場合(法人後見)や、後見人が一人でなく複数人で役割を分担して後見活動を行う場合(複数後見)もあります。

後見人が選任されると、その内容が法務局に登記されます。

(3)後見人の仕事

後見人の仕事は、本人に代わって「財産管理」(預貯金の管理や各種の支払いなど)や「身上監護」(介護サービス・医療サービスの契約、日常生活や健康状態の見守りなど)を行うことです。

この「財産管理」と「身上監護」を通じて、本人の意向を最大限尊重し、本人の権利を守り、本人が望む本人らしい暮らしを実現することが大切であり、その責任は重いといえます。

そして上記の内容、すなわち後見人としてどのような仕事をしたかを家庭裁判所に報告します(通常、1年に1回)。後見人としての仕事は、原則、本人が亡くなるまで続きます。

4.任意後見制度の内容

今は元気ですが、判断能力が十分あるうちに自分の意思に基づいて、将来、自分の判断能力が不十分になった時のために、自分のことを支援してもらう人(任意後見人)を決め、併せて、その人に支援してもらう内容(代理権を規定)を契約(任意後見契約)で決めておくのが「任意後見制度」です。

法定後見人と同様、任意後見人には特に資格等はなく誰でもなれますが、親族がなる場合(親族後見人)や弁護士、司法書士、社会福祉士、ファイナンシャル・プランナー(FP)等がなる場合(専門職後見人)、また一般の市民が第三者として後見人を務める場合(市民後見人)があります。

任意後見契約は、公証役場で公正証書を作成して行います。公正証書の内容は法務局に登記されます。その後(通常、何年か経過して)、本人が認知症などにより判断能力が衰えてきた状態になった場合、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをします。

任意後見監督人は、任意後見人の仕事を監督する人です。任意後見監督人が選任されると、元気なうちに締結した「任意後見契約」が実行できる状態となり、任意後見契約で決めた預貯金の管理や支払い等(財産管理)や介護サービス契約の締結等(身上監護)の支援内容を任意後見人が実際に行えるようになります。

法定後見人の場合と同様に任意後見人も、「財産管理」と「身上監護」を通じて、本人の意向を最大限尊重し、本人の権利を守り、本人が望む本人らしい暮らしを実現することが大切であり、その責任は重いといえます。

5.ライフプランに成年後見制度の利用も考慮する

くらしとお金を考える中で、老後のライフプランとしては、退職後の必要資金、年金など「元気なうちの計画」や相続・贈与等財産などの「死後の取扱い」などについては考えます。しかし、見落としがちなのが、「元気なうちの計画」と「死後の取扱い」の中間に自分の判断能力が衰えた時にどう対処するか、という問題があることです。

自分は「認知症にはならない」、または「自分の判断能力が不十分になるとは思ってもいない」と考える方が多いのですが、認知症は誰にでも起こりうることです。ぜひ、そのことも含めて、老後のライフプランを考えていくことが大切だと思います。

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