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2011年8月号
資産運用
ファイナンシャル・プランナー 横小路 八重子

定期預金は目減りする!?

銀行に預けたら損をする?

「退職金でまとまったお金が入ったので。」「住宅資金がかなり貯まったので、購入までに少しでも殖やしたい。」「介護資金は少しでも多いほうがいいから。」「これから子どもにお金がかかるので。」きっかけや目的は様々ですが、よりよい運用の考え方についてのご相談を良くいただきます。
「定期預金の金利はとても低いので、まとまったお金を預けたら目減りしてもったいないのでは。」と、どなたも口を揃えておっしゃいます。しかし、それは本当でしょうか?
そもそも定期預金の目減りとは何でしょう?預けたお金が減ってしまうのでしょうか?
いえいえ、定期預金は安全資産といい、元本が補償されています(*1)。定期預金の目減りとは、物価水準が上昇しているにも関わらず金利は上昇せず、相対的なお金の価値が下がってしまうような状況のことをさします。
そういわれてみると、ディスカウントショップや百円ショップが話題になる一方で、欲しいもの、必要なものの値段は高くなっているという実感をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。長い間続いている低金利が今後も続き、このまま預貯金金利は上がらず、物価だけが上がってゆくとしたら、お金の価値は間違いなく下がると不安を感じる方がいるのも無理はありません。

安全資産のメリット

しかし、少し冷静に統計を長期的に振り返って見てゆくと、金利水準と物価水準は上昇率や時期に差はあっても比例しています。かつてのバブル期には地価も給与も右肩上がりのインフレ状態で、預貯金金利には8%を超えるものもありました。銀行や郵便局に預けておくだけで今の投資信託の運用利回りよりずっと高い利回りを見込める金利です。
つまり、世の中の金回り状況が膨らめば、物価も金利も上がり、萎めば下がります。確かに物価上昇率と金利上昇率には差があり多少の目減りが生じることはあります。しかし、預貯金は何より元本が保証され、100万円は減ることはなく「100万円プラス金利」となります。これが安全資産である預貯金のメリットです。
一方、皆さんが金融機関の窓口などで「預金より利回りが良い」と勧められたりする投資信託などリスク商品は、元本保証がありません。ここでいうリスク商品の「リスク」とは100万円が120万円に殖えるかもしれないが、80万円に減るかもしれない、という幅のことです。預貯金金利を大きく上回る利回りで元本が殖えることがある代わりに、リーマンショックのときのように、大きな元本割れも起こり得ます。そうなると、目減りというような次元の話ではなくなってきます。

あなたはどこまでリスクを受け止められるか

この損失の幅をどこまで受け止められるかを、「リスク許容度」といいます。購入した商品価値が大きくマイナスに振れても、ライフプランに大きな影響を及ぼさずに済むかどうかということです。
ライフプランには三大資金といわれる「住宅資金」、「教育資金」、「老後資金」があります。つまり、どんな家に住むか?どんな教育を受けさせるか?どんなセカンドライフを送るか?という人生設計の実現資金ともいえます。これらの資金がしっかりと確保された上でなら多少の損失も許容でき、時間を考慮に入れた上手な運用戦略も立てられます。
しかし、三大資金の確保が不十分では、ちょっとした損失で人生設計が大きく狂うこともあります。冒頭の相談をされてきた方々は、この三大資金を、目減りする定期預金では無く、より良い運用方法を活用して殖やしたい―つまり、リスク許容度の無い状況で運用して殖やしたいと考えられたわけです。
このように考えると、用途の決まっている資金はどうすればよいか、おのずと分かってくるのではないでしょうか。目減りと言う一見説得力のあるセールストークにより、どのような商品かよく分からぬまま、リスク商品を購入される方たちが少なくありません。
大切なことは、ご自分のお金の用途を明確に認識し、金融商品の知識を学んでゆくことです。そのうえで、それぞれの状況に見合ったルールの中で賢い運用をしていただきたいと思います。

*1:

金融機関が破綻した場合でも、預金保険制度により定期預金や普通預金など一般預金等は元本1,000万円までと、その利息が保護されます。

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