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2011年5月号
その他
ファイナンシャル・プランナー 井上 信一

「視点を変えて考えてみる」ということ

判断に迷った時やなかなか行動に踏み出せない時、「押してもだめなら引いてみな」の如く、考える視点を変えてみることは大切なことです。
とりわけ、お金に関わる悩み事を容易く解決できる妙案を見つけるのは難しいことですし、すべてを一言で片付けるわけにはいきません。しかし、一方の側面からの考えにこだわりがちな問題であるゆえ、些細な発想の転換でヒントを見つけられることも少なくはないと思います。

よくお受けする相談事例から

投資商品の価格の下落が著しく、このまま保有するかいっそ換金すべきかを判断するための考え方についてご相談をお受けすることがあります。後悔しても始まらないと仰っていても、必要に迫られた資金であるほど次の一手が重く、その痛みは強く伝わります。ただ、どれだけ目減りしたのかが先に立ち、肝心の保有残高を念頭に置いている方はそう多くはありません。そのような時は、「いま残っているご資産で不十分ですか?あと、どのくらい増えればご希望の用途を賄えますか?」と、過去の収支成果ではなく現実に目を向けていただくことで、理性が感情に追いつき、将来に向けた打ち手を定めて頂けることがあります。
生命保険のご相談では、既契約の見直しや新規加入において商品性の損得で取捨選択を決めかねる方も多くおられます。保険は安心のための先物買いでもあるので、確かに保障が充実するに越したことはありません。しかし、突き詰めるほど、その際限もないものです。話を伺い、大切な貯蓄形成に回す金額が不十分だと感じられる際は、「仮に現在の保険料を半分に減らさねばならないとしたら、何を残しますか?」と伺ってみることにしています。すると、どの保障も捨て難いと悩まれていた方でも、往々にして「あったら嬉しい程度の保障」ではなく、「なくてはならない保障」を自ずと選ばれるものです。
また、後期高齢期の生活資金に不安を抱いておられる方は、自然と現在の生活水準や統計的な生活費の目安等の情報が根底にあり、影響しているように思います。将来の予測は不確かであることを承知いただいた上で、「今の預貯金の額と年金水準から介護費等の予備を指し引くと、100歳まで貯蓄が底をつかない生活費の概算水準はこのくらいです。」と申し上げると、逆に割り切れる面もあるようです。少々乱暴ではありますが、そこから、医者に頼らない健康管理やお金によらない楽しみに目を向けることも可能かもしれません。

正解のない選択肢はない

ベターな答えが存在することはあるかもしれませんが、ベストと言い切れるものは稀でしょう。また、各々の価値観によりそれが異なるのと同じく、その先も幾つもの選択をしながら暮らしが続いていくのですから、例えどのような選択を下したとしても不正解ということはないと思います。「塞翁が馬」のように、ものごとは考え方ひとつでどうにでも考えられるのならば、せめて気持ちが少しでも楽になるような視点で捉えてみたいものです。

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