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知っておきたい公的年金の保障
公的年金と聞くと、老後に受け取れる「老齢年金」のイメージが強く、現役世代の方は、まだ先のこと思われているかもしれません。しかし、公的年金制度には、障害状態になった場合に受け取れる「障害年金」、ご自身やご家族が亡くなったときに残された遺族が受け取れる「遺族年金」といった現役世代の方も受け取れる年金があります。
公的年金には、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険の2種類がありますが、今回は、国民年金(基礎年金)の3つの保障について解説します。
公的年金の仕組み
日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の方が加入する厚生年金の2階建てになっています。つまり、会社員・公務員の方は、2つの年金制度に加入していることになります。
下記のように、職業によって、加入する年金や保険料が変わります。
種別 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 |
---|---|---|---|
年齢 | 20歳以上60歳未満 | 在職中 (20歳未満70歳まで) |
20歳以上60歳未満 |
職業 | 自営業者・学生・ 無職の方など |
会社員・公務員の方など | 第2号被保険者に扶養される専業主婦(主夫)の方 |
加入する制度 | 国民年金のみ | 国民年金+厚生年金 | 国民年金のみ |
保険料 | 16,610円 (2021年度) |
(毎月の給与+賞与) ×18.3%(労使折半) |
保険料負担なし |
老齢基礎年金とは
65歳になったときに亡くなるまで一生涯にわたって受け取ることができる年金です。
老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した期間が10年以上必要です。
受け取れる年金額は、20歳から60歳までの保険料納付済期間や保険料免除期間によって決まり、40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金 年額780,900円(2021年度)を受け取ることができます。
支給開始年齢は65歳からですが、60歳から繰上げ、70歳(2022年4月からは75歳)まで繰下げすることができます。繰上げの場合は月0.5%(2022年4月からは0.4%)減額され、繰下げの場合は月0.7%増額されます。
障害基礎年金とは
障害の原因となった病気やけがの初診日が65歳未満で、障害認定日に、障害の程度が1級または2級に該当するときに受け取れる年金です。
障害認定日に障害等級に該当しない場合でも、65歳になるまでに、障害の程度が1級または2級に該当する状態に悪化すれば、障害基礎年金を請求できます。(事後重症による請求)
ただし、老齢基礎年金を繰上げ請求した後に、障害状態が悪化しても事後重症による請求は行えません。また、老齢基礎年金を繰上げ請求した後に初診日(初診日が第2号被保険者期間中の場合は除く)がある場合、障害基礎年金は受け取れません。
障害等級 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
年金額 | 780,900円×1.25+子※1 | 780,900円+子※1の加算※2 |
※118歳到達年度末までの子または20歳未満で1級・2級の障害の状態にある子 ※2第1子・第2子→各224,700円 第3子以降→各74,900円※3 |
初診日に20歳未満であった方が、20歳に達した日に1級または2級の障害の程度に該当すれば、保険料を支払っていなくても障害基礎年金が支給されます。ただし、一定以上の所得がある場合は、保険料を納付している方との公平性の観点から、所得制限が課されます。
遺族基礎年金とは
国民年金に加入中の方などに生計を維持されていた①子※1のある妻・夫(年収850万円未満)または②子※1が受け取れる年金です。
年金額 | 子※1のある妻・夫が受け取るとき | 780,900円+子※1の加算※2 |
子※1が受け取るとき | 780,900円+(2人目以降の子※1の加算※2) | |
※118歳到達年度末までの子または20歳未満で1級・2級の障害の状態にある子 ※2第1子・第2子→各224,700円 第3子から→各74,900円 |
保険料納付の要件を確認しましょう!
障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取るには、下記のいずれかの要件を満たす必要があります。
初診日もしくは死亡日の前日において
①初診日もしくは死亡日の月の2カ月前までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること。
②初診日もしくは死亡日に65歳未満であり、初診日もしくは死亡日の月の2カ月前までの1年間に保険料の未納期間がないこと。
まとめ
公的年金の保障を受けるには、保険料を納付することが大切です。保険料の未納期間が多いと、保障を全く受けられないおそれがあります。経済的な理由で国民年金保険料を納めることが難しい場合、所定の手続きを行えば保険料の納付免除や猶予制度を利用することができます。3つの保障を受けるためにも、正しい知識を身につけ、きちんと手続きをするようにしましょう。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。

