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2019年4月号(1)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 近藤 喜隆

今改めて振り返る3つの遺言制度

 高齢化社会を迎え、それに伴う相続問題も増加の一途をたどる昨今、遺言の重要性はますます高まっています。そこで今回は、最近法改正もあった3つの遺言制度を改めて振り返っていきましょう。遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

自筆証書遺言

 名前の通り遺言者自身が手書きで書く遺言形式のものです。よくTVドラマに出てくるような、家で手紙を書くようなイメージのものはこれにあたります。従来は全文自筆が大原則で、PCやワープロで作ったものは認められていませんでした。しかし相続民法改正に伴い、平成31年1月13日より、財産目録に関しては、自筆ではなくPCでの作成も認められるようになりました(署名押印が必要となります)。
 これにより作成者の負担も大幅に軽減されることとなりました。財産目録とは、不動産や金融資産の一覧表と考えていただければ結構です。例えば土地の地番ごとのリストや、預貯金の一覧表がそれにあたります。預貯金の財産目録はその通帳のコピーで代用することも可能となりました。
 詳しくは法務省のHPでご確認ください。
http://www.moj.go.jp/content/001263487.pdf

 自筆証書遺言は、証人不要や費用がかからないメリットの反面、相続発生後、家庭裁判所での検認が必要です。また書式不備により無効となることもありますので、しっかりとした準備が必要となります。従来は保管場所に取り決めがありませんでしたが、法改正(法務局における遺言書の保管等に関する法律の成立)により法務局で保管してもらうことも、2020年7月10日から可能となります。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

公正証書遺言

 これは公証役場という場所で、公証人という法律のプロに作成してもらう遺言形式です。本人が口述し、公証人が聞き取り、筆記します。法律のプロが作るため、書式不備による無効は基本的にありませんし、原本を公証役場で保管してくれるため、紛失・改ざんの恐れもありません。自身の遺志を一番確実に残せる信頼性の高い遺言形式といえます。その反面、作成に手数料がかかる、証人が必要といった制約もあります。手数料は相続財産額によって決定されますが、例えば財産額1億円であれば、43,000円となります。詳しくは日本公証人連合会のHPをご覧ください。
http://www.koshonin.gr.jp/business/b01

 また証人が二人以上必要となりますが、証人になれる人は制約があり、推定相続人や、その配偶者や直系血族、公証役場関係者、未成年はなれません。よって信頼のおける知人や、法律の専門家にお願いすることが多いですが、身近に適当な人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。

秘密証書遺言

 最後にご紹介するのは、秘密証書遺言です。これは自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的なものといえます。あらかじめ本人が作成してきた遺言(自筆はもちろん、PCでの作成も可)を公証役場に持ち込み、公証人の目の前で、封印します。その際、証人も二人必要で、封筒に押す印鑑は、中身の遺言書に押印したものと同一でなければいけません。中身を知られることなく、遺言書の存在を証明できますが、その後の保管は公証役場で行う訳ではありませんので、紛失の恐れもありますし、そもそも方式不備で無効となる可能性もあるのです。(但し秘密証書遺言としては無効でも、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、自筆証書遺言としては有効となります。)公証役場での手数料は11,000円の定額ですが、家庭裁判所の検認も受けなければなりません。秘密証書遺言の利用件数は前者2つに比べ極めて少ないのが特徴です。

 以上、3つの遺言形式を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。法改正もあり利便性を増す自筆証書遺言ですが、その一方で公正証書遺言の確実性も改めて見直されることとなりそうです。
 これを機に遺言について考えてみるのもいいかもしれませんね。

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