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2017年9月号(2)
資産運用
CFP®認定者 岩永 真理

iDeCo(個人型確定拠出型年金)の受け取りは加入時から意識して

 2017年1月から、ほぼすべての人が加入できるようになったiDeCoが大きな注目を集めています。掛金に対する税率分の所得税・住民税が安くなり、運用益が非課税になることを知ってiDeCoを始める方がいらっしゃると思います。しかし、受取時の税制についてもその内容を正しく理解していないと、こんなはずではなかったと後悔しないとも限りません。iDeCoは受取時まで見据えて、本当に有利になる利用法を考えることが大切です。

受取方法は3つ

 1.年金
 2.一時金
 3.一時金と年金

 それぞれの方法に対して、一定の金額まで税金がかからない「控除」があるため、受取時にも税金優遇があるといわれます。控除額を超えると、超えた分には税金がかかります。

控除とは?

 1.年金で受け取る場合は「公的年金控除」
 2.一時金で受け取る場合は「退職所得控除」
 3.1.2の両方で受け取る場合は、両方の控除

 1は公的年金、つまり国(国民年金)や会社などの所属団体など(厚生年金)からの年金と合算します。2の一時金は、退職金や共済金がある方は、それらと合算します。いずれもiDeCo専用の控除枠があるわけではありません。
 従って、もともと公的年金や退職金などが控除額を超えて受給できる人には、iDeCoの受給で所得を増やすことは、所得税・住民税の増税につながります。更に、所得額を計算根拠とする国民健康保険料や介護保険料の増加を招くことになります。

控除額はいくら?

1.公的年金控除額(年額)
   65歳未満:  70万円
   65歳以上: 120万円

2.退職所得控除額
 勤続(掛金支払)年数20年超:800万円+70万円×{勤続(掛金支払)年数-20年}
 勤続(掛金支払)年数20年以下:40万円×勤続(掛金支払)年数(最低80万円)
  ※1年未満の端数は切り上げ、( )内はiDeCoの場合

 年金予想額は「ねんきんネット」で、退職金は会社の就業規則などで確認し、控除の範囲内かどうか、超えるとすればどれ位かを知ることで、iDeCoの掛金をいくらにするかの判断材料にもなり得ます。

注意すべきポイント

1.iDeCo受取時の税金計算上の所得とは?

 運用でもうかった部分のみではなく、自分で支払ったいわゆる元本部分に対しても、すべて課税対象となります。
 極端に言えば、運用がうまくいかず損をして受取額が元本を下回る場合でも、控除額を超えると税金がかかります。

 掛金の全額所得控除という税制メリットは、受取時に控除額を超えた部分は全額課税というツケで戻ってきますので、効果は課税の繰り延べ(税金の支払期日の延期)に限定される場合があります。

 節税になるかどうかは、運用状況や控除を超える金額にもよりますが、
 仮に掛金支払金額と控除を超える受取金額が同額であれば、税率の問題になります。
 低い税率の時に税金を払えば、節税になります。
 所得が少ないほど税率は低くなりますので、一般的には、現役で掛金を払っている時より、リタイア後に受け取る時の方が所得は低いと考えられるので、税率も低い可能性があります。掛金支払時に所得控除で得する税金よりも、受取時に払う税金の方が少ないと期待されます。

 iDeCoでも元本保証の商品はありますが、注意点の1つとして元本保証の商品のみで運用し続けると、口座管理手数料の方が高くつき、実質マイナス運用になることがあります。「掛金が所得控除で税金が安くなっているからよい」と考えていらっしゃる方は、受取時に課税される可能性があることも頭においておくことが必要です。

2.年金でもらうか、一時金でもらうか

 税金を加味すると総合的にどちらが得かという議論はあります。
 一般に、掛金の支払年数が長い場合は、退職所得控除額も大きくなり、一時金で受け取った方が税金上は有利になる場合はあります。ただし、一時にまとまったお金をもらっても、老後の長い年月上手に使ったり運用したりするのは簡単ではありません。
 総受取額が極端に変わらなければ、健康保険料などが上がっても、ライフプランと照らして年金でもらうのもよいでしょう(例:60歳時点で貯蓄があまりない人が65歳の年金受取までの間の生活費としてiDeCoを年金で受け取る、退職金で住宅ローンの残債を返済し、iDeCoを年金で受け取り生活費にする、など)。

3.いつもらうか?

○年金でもらう場合
・60歳~65歳までの5年間は、国民年金をもらう前なので、控除額は少ないですが控除内に収まる可能性もあります。定年退職などで収入が減る際に、収入レベルを保つためにも有効です。
・65歳以降でも受取額が多ければ、公的年金のもらう時期を繰り下げると、公的年金額は割増になります。
・一年あたりの受取額を少額にして細く長く(最長20年)受け取ると、税金を抑えられることもあります。

○一時金でもらう場合
 退職金・共済金などがある方は、時期をずらしてもらうのも一案です。先に利用した退職所得控除枠が残っていれば、あとで残りを利用できる場合もあります。状況により異なるので、詳しくは税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

4.専業主婦には本当にメリットがないのか?

 所得がないため所得控除がなく、iDeCoのメリットはないという考えもあります。
 一方、年金も退職金も少ないか全くないことも多いため、受取の際に控除範囲内に収まり非課税で受け取れる可能性が大いにあります。
 口座管理手数料はかかりますが、60歳まで掛金を支払えて、70歳まで非課税で運用できるので、NISAよりも長期間、金額も多く運用可能となるケースもあるでしょう。
 就職などで立場が変わっても、継続できることも利点です。

 iDeCoは職業や立場によって掛金の上限が異なります。
 加えて個人の公的年金額や退職金額なども一人ひとり異なるため、個別に計算しないと最も有利な方法がわかりにくいことがこの制度の難しいところです。
 加入時のメリットはよく解説されていますが、受取時の注意点は残念ながらあまり伝えられていません。受取時に注意するべき年金や税金を、加入時から意識してよく理解しておくことが、この制度を上手に利用するための方法です。

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