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2017年6月号(2)
資産運用
CFP®認定者 黒澤 佳子

平成29年度進学者より始まった国の給付型奨学金制度

 「大学で学びたい!」そんな純粋な意欲あふれる学生が、経済的理由で学業を断念せざるをえないのは非常に残念なことです。
 中学までの義務教育で日本人の学力は一定水準を保っており、記名選挙が行われる国として、教育の面で諸外国に遅れをとっている意識はないものと思われます。しかし日本の教育費は高い水準にあり、自分が受けたい教育を誰もが受けられる環境ではありません。そのような中、日本でも政府主導のもと、返済不要の「給付型奨学金」が始まりました。

諸外国の奨学金制度

 諸外国では、さまざまな奨学金制度があります。奨学金といえば給付型が多く、貸与型も含めて多種多様な選択肢が用意されています。また国によっては大学の授業料そのものが無償であったり、日本と比較すると授業料が非常に低水準であったりします。例えばドイツでは家庭の収入に応じて自動的に奨学金が給付され、家庭の経済状況によらず教育を受けられる環境が用意されています。

日本の奨学金制度

 文部科学省が所管する日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、学生2.6人に1人(学生の38%)が利用しています。
 しかし奨学金を利用している人の多くは貸与型で、将来にわたり返済が必要になります。いわゆるローンと同じなので、返済が滞ったり返済不能に陥ったりするケースが起きています。親も「奨学金があるので大丈夫」と思いがちで、返済する子の経済的負担をあまり考えずに借りてしまうケースも見受けられます。
 日本学生支援機構(JASSO)の第二種(有利子)奨学金を限度額まで借りると、月12万円まで借りられます。これを4年間借りると576万円、就職してから20年かけて返済すると、月26,606円の返済になります(日本学生支援機構Webより)。
 一方で、厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査(初任給)」によると、大卒初任給の平均額は20.34万円です。手取りにするとおよそ16万円程度。毎月3万円近い額を返済しながら生計をたてるのは、決して楽なことではありません。20年の返済となると、自分の子供の教育費も気になる年代に差し掛かるでしょう。

日本における給付型奨学金

 日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金の対象者は、1.社会的養護を必要とする人、2.住民税非課税世帯または生活保護受給世帯です。高い学業成績や学業以外の活動で成果をあげた生徒を学校が推薦して選抜し、各高校で1人以上が採用される予定です。
 給付額(月額)は、自宅通学の場合は、国公立2万円、私立3万円、自宅外通学の場合は、国公立3万円、私立4万円です。社会的養護を必要とする人には、一時金として入学時に24万円の交付を受けることができます。(平成30年度進学予定者用 給付奨学金案内より)
 なお、貸与型である第一種(無利子)や第二種(有利子)奨学金との併用は可能です。他にも、従来より自治体や民間企業が行う給付型奨学金もあります。
 民間企業が行う奨学金には、貸与型の中でも、実際にグループ企業に就職したら返済が免除されたり、技術職に就いた場合は返済額が半分免除されるというようなものもあります。このような奨学金の情報を入手し、上手に活用したいですね。

給付型奨学金の利用上の注意点

 給付型奨学金の中には、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金との併用が不可のものもあります。また、成績不振や学校処分等を受けると、給付資格を失うだけでなく、すでに受け取った奨学金の返還を求められる場合があります。
 現在の日本学生支援機構(JASSO)の給付額は月額2~4万円で、学費だけでなく学生生活費も必要なケースでは、金額的に十分と言えない人も多いでしょう。そうなると、貸与型との併用、教育ローンなど、他にも準備しなければいけません。
 大学の中には、特待生制度があったり、英検などの資格や出願時期に応じて入学金や授業料を減免する学校もあります。まずは進学希望の学校に、学費の減免措置があるかもしっかりと確認しておきましょう。

 以上のように、日本における給付型奨学金はまだまだ発展途上にあります。経済的に余裕のない学生は、アルバイトなどで生計を立てなければならず、学業に専念することができなかったり、また授業の出席もままならず、成績不振になるケースもあります。
 すべての意欲ある学生が学業に取り組むことができるよう、給付型の奨学金のさらなる拡大が望まれます。

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