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2017年2月号(1)
ライフプラン
CFP®認定者 蟹山 淳子

高齢になった親の財産管理

 いつも元気だった親が高齢になり、認知症の兆しを感じたとしたら、子どもとしてそれを認めたくない気持ちになるのは仕方ないことですが、何の対策も取らないまま、認知症が重症化すると、介護はもとより「お金」の管理にも困ることになります。

1.親が認知症になって困ること

 認知症で判断能力が低下し、徘徊や火の始末が心配になってくると、介護施設への入所を検討することも多いでしょう。例えば介護付き有料老人ホームに入所するには、まとまったお金が必要となります。ところが、子どもが銀行に行って親名義の預金を引き出そうとしても、本人の意思が確認できないという理由で、預金の引出しを断られてしまいます。

 もちろん、個々の金融機関によって対応は異なりますし、緊急に入院費用が必要になった場合などは、特例として認めてくれることもあるようです。ただ原則として、認知症になった親の預貯金を引出すには家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、成年後見人が手続きをする必要があります。

 その他にも、空き家になった親の家を売却しようとするとき、また認知症になった親が相続人となって遺産分割協議をするとき、成年後見人でない限りは子どもが手続きをすることはできません。

2.成年後見制度とは

 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人は、預貯金や不動産などの財産を管理したり、介護などのサービスや施設入所のための契約を結んだりする時に、自分で判断するのが難しい場合があります。そこで、家庭裁判所が本人の権利を守る成年後見人を選び、法律面で支援するのが成年後見制度です。成年後見人は本人に代わって、必要な契約を結んだり、財産を管理したりします。もし、被後見人が自分で不利な契約を結んでも、悪徳商法の被害に遭っても、後見人は契約を取り消すことができます。

3.成年後見制度を利用するための手続き

 成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度がありますが、親の判断能力が低下してから申し立てるのは法定後見制度です。また、判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。手続きは家庭裁判所に申立てをすることで始まりますが、提出する書類の種類が多く、記載事項も多岐にわたるので、一般の人が自分で手続きするにはかなりの労力が要るでしょう。その際は、別途費用がかかりますが、弁護士や司法書士などの専門家に相談する必要が出てくるかも知れません。申立て自体にかかる費用は1万円以下ですが、医師の診断書に5万円から10万円程度かかります。審査期間は1か月から2か月の場合が多いようです。

 後見人候補者を申請することはできますが、職業、収入、家族関係の状況などに鑑みて、家庭裁判所が総合的に判断するので、必ずしも家族が後見人になれるとは限りません。実際に家族が後見人として選ばれるのは約3割、残りの7割は弁護士、司法書士、社会福祉士などで、全く面識がない人を家庭裁判所が後見人として選ぶケースもあるようです。もし、どうしても家族を後見人にしたい場合は、親に判断能力があるうちに、任意後見の契約を結んでおくのが良いでしょう。

4.後見人ができること・できないこと

 後見人は、本人に代わって財産管理をすることができますが、後見人の判断で何でもできるわけではありません。不動産を売買する場合には家庭裁判所の許可が必要ですし、預金を引き出せるのは本人の生活のためだけで、家族への贈与や援助などはできません。また、後見人としてした仕事を記録し、家庭裁判所に報告することも求められます。

5.困る前に準備できること

 親が年を取って、頼りなく思えてきたら、「財産管理で手伝えることはないか」と問いかけてみてはいかがでしょう。特に親が一人暮らしになってからは、備えが必要となります。一人で金融機関に行くのが難しくなった時にどうするか、対策を話しておくと「いざという時」に戸惑わずに済みます。少なくとも預金通帳や印鑑、キャッシュカードがどこにあるか、探せるようにしてもらうと良いでしょう。もし、他に兄弟姉妹がいる時には、一緒に話し合って認識を共有しておくことも重要です。

 財産管理を手伝い、親子のコミュニケーションを密接にすることで、認知症などの病気にも早く気付くことができますし、なかなか切り出しにくい相続について、話すきっかけを見つけることができるかもしれません。特に認知症の兆候が感じられる時には、早めに専門医の診察を受けることで治療ができる可能性もあるので、かかりつけの医師や包括支援センターで相談すると良いでしょう。また、「お金」のトラブルを未然に防ぐために、任意後見制度や、公正証書遺言の作成などの対策も検討しておきたいものです。

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