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2016年12月号(1)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 本間 慶喜

空き家の売却に朗報!~空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除~

 空き家は近年増加傾向にあり、全国に820万戸※1もあると言われています。治安や景観の悪化、災害時の倒壊などが大きな社会問題となっており、その対策が急がれています。本コラムでは平成28年度税制改正で新たに設けられました「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」を取り上げます。
※1 平成25年総務省統計局調べ

1.空き家をめぐる近年の動き

 空き家については、各自治体が条例を制定するなどして対応してきましたが、平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律は地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用を目的としています。
 「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」は、相続によって空き家となってしまった家屋等を売却しやすくするために制定されたと考えることもできます。

2.制度の概要

 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又は取壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除する、というものです。

<本特例を適用した場合の譲渡所得の計算式>
  譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除3,000万円

 つまり、3,000万円控除が適用できれば、税額に換算すると600万円程度※2の税額が軽減できるのです。
※2 長期譲渡所得とすると、税率は所得税15.315%+住民税5%の合計20.315%
   3,000万円×20.315%=6,094,500円

3.適用要件および適用に際してのポイント

 本特例の適用要件と摘要に際して特に気を付けて頂きたい点について簡単に述べておきます。

(1)

続開始直前において被相続人が1人で住んでいたこと

(2)

昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有家屋を除く)であること

(3)

相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていないこと
相続開始後空き家状態にしておくのはもったいないと考えて人に貸すということもあるかもしれませんが、そうするとこの要件を満たさなくなってしまいます。

(4)

譲渡価額が1億円以下であること
特例を使うためにギリギリの1億円に売値を設定するような場合は注意して下さい。
通常不動産の売買では固定資産税の精算が行われますので、その対価を含めると1億円を超えてしまうかもしれません。

(5)

相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること

(6)

平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡すること
適用期間にも注意が必要です。この特例は平成28年4月1日からの譲渡に適用され、その相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに譲渡することというのが要件ですので、具体的には平成25年1月2日以降の相続が対象ということになります。例えば、平成25年1月2日に相続人である長男が家屋を相続し、長男が平成28年4月1日~12月31日の間に譲渡した場合、本特例の適用が受けられます(他の要件は満たしているものとする)。

(7)

家屋を取り壊さずに譲渡する場合にはその家屋が新耐震基準に適合するものであること
なお、取り壊してから売却する場合は、解体前の写真など証拠になるものが必要となります。解体してしまった後気が付くなど、手遅れとならないようにしましょう。

 また、この特例の適用は家屋が主体になります。家屋を長男が、土地を長男と次男が共有で相続しその後譲渡をした場合は、家屋の所有者である長男にのみにこの特例が適用され、土地のみの次男には適用されません。このように特例適用のためには遺産分割の時点から気を付けましょう。

 このように適用要件がたくさんあります。また、用意する書類も多くありますので、この特例を使う可能性が想定される場合は、早めの準備をすると良いでしょう。詳しくは国土交通省のホームページなどを参考にして下さい。

4.最後に

 空き家は維持管理面からも負担となります。早めに家族で話し合いなどして空き家になった場合の対策を立てておくと良いでしょう。そのためには税理士などの専門家の助言も役立ちます。
 相続によって取得した空き家を何とかしなければと思いながらも、自分たちが生まれ育った思い出深い実家である場合が多く、なかなか決心がつかないというのが現実的なのでしょう。その意味では法的な制度を整えるだけでなく、気持ちの整理も必要なのかもしれません。

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