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専業主婦(夫)も対象に!個人型確定拠出年金に注目
2017年1月から個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入対象範囲が拡大され、公務員や専業主婦(夫)なども加入することが可能となります。現役世代は皆個人型DCに加入できるようになるので、この機会に制度の仕組みやメリット・デメリットを整理してみました。
1.個人型DCとは
確定拠出年金とは、老後の資産形成を目的として、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金のひとつです。企業型と個人型があります。
2.個人型DCの大きなメリットは節税
加入すると3つの場面で節税効果があります。
(1)掛金を積み立てる時
掛金が全額、所得控除の対象になり、所得税と住民税が軽減されます。
(2)運用期間中
運用益が非課税となるため掛金や運用益をそのまま運用資金にすることができ、複利効果が大きくなります。
(3)受取時
一時金で受け取る場合は、「退職所得控除」。年金で受け取る場合は「公的年金等控除」 の対象として優遇があります。
上記(1)の所得控除について例をあげてみます。
1年間の所得が330万円の人の場合(所得税率10%+住民税率10%として計算)加入していないときの税金は 330万円×20%=66万円
毎月2万円の掛金をした場合、年24万円を330万円の所得から控除することが可能です。
(330万円-24万円)×20%=61.2万円 66万円-61.2万円=4.8万円
所得税率10%で年4.8万円の節税となりました。
3.扶養の範囲内で働いている方の加入メリット
現在、パートなどで働いて配偶者の扶養範囲で年収を103万円以内で調整している方も多くいます。この方が個人型DCに加入したとし、掛け金限度額23,000円/月分多く働くと、年間で27万6,000円の収入増です。増えた分に税金がかかりますので所得税5%、住民税10%として計算した場合、41,400円の税金を支払うことになります。
しかし、27万6,000円の収入を個人型DCの掛け金にすると「小規模企業共済等掛金控除」となり非課税となります。仮に30歳の方が60歳まで個人型DCで毎月23,000円を積み立てると828万円になります。税金を払わずに老後資金を貯めることができるのです。
また、70歳前に高度障害者になった場合に受け取ることができる障害給付、死亡した場合に遺族が受け取ることができる死亡一時金もあり、老後の資産形成だけではなく保障も兼ね備えています。
4.非課税で増やして老後資金に
所得控除が利用できなくても、個人型DCで運用した場合、運用益は非課税です。同じように運用益が非課税になるNISAがありますが、現時点では金額や運用期間に制限があるため長い目で見るとDCの方が税制優遇を受ける総額は多くなります。
そして、受け取り時ですが一時金で受け取る場合は退職所得控除があり(上記2.のケースで30歳から60歳まで30年間働いた場合、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円)非課税で828万円の一時金を受け取ることが可能です。年金で受け取る場合は年金等雑所得の扱いになり税金が優遇されます。
5.加入前に確認しよう
このように、個人型DCは老後の資産形成に役立つとして期待が持たれていますが積み立てたお金は原則60歳まで引き出しが出来ないこと、運用成果は自己責任となり確定していないというデメリットもあります。加入前には商品の仕組みをよく理解して計画的に始めることが大切です。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。