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2016年8月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 鈴木 暁子

「年収106万円の壁」で変わる!?パートタイマーの新たな働き方

 パートタイマーにとって「壁」というと、会社員や公務員などの配偶者で、扶養に入って働いている方が気にされている年収103万円と130万円の壁が思い浮かびますが、2016年10月から新たな壁が追加されます。これにより、いわゆる「扶養の範囲内」で働いている方は、今後の働き方を考える必要がありそうです。

1.そもそも103万円と130万円の壁とは?

 まず、103万円と130万円の壁について確認しておきましょう。
 「103万円の壁」というのは税金に着目した基準です。給与所得者には、年収により一定の金額を収入から差し引いてもらえる「給与所得控除」があり、最低控除額は65万円となっています。これに一律38万円差し引いてもらえる「基礎控除」がありますので、最低103万円を収入から控除できることになります。したがって、年収が給与収入のみで103万円以下であれば所得がゼロとなるため、所得税は課税されません。

 一方、会社員や公務員(2号被保険者)の配偶者で、年収が130万円未満であれば、健康保険制度では「被扶養者」、年金制度では「3号被保険者」となるので、本人が健康保険料や年金保険料を負担する必要はありません。これが「130万円の壁」で、こちらは社会保険料に着目した基準です。

このような壁を意識した働き方として、現在は以下の選択肢があります。

(1)

年収を103万円以下で調整し、税金面でも社会保険面でも扶養となる。

(2)

年収を103万円超130万円未満で調整し、税金面では扶養をはずれても社会保険では加入対象とはならず、扶養となる。

2.新たな基準「年収106万円の壁」とは?

 2016年10月からは社会保険の適用要件が変わり、以下の要件をすべて満たす場合、本人が社会保険の加入対象となります。

 ・勤務時間が週20時間以上
 ・1か月の賃金が88,000円(年収106万円)以上 ※交通費、残業代は含まず
 ・勤務期間1年以上
 ・従業員501名以上の企業に勤務

 簡単にいうと、130万円の壁が106万円に引き下がるということなのですが、どのような影響があるのでしょうか。

 毎月10万円(年収120万円)で働いている東京都のパートタイマーの例でみてみると、現在は所得税、住民税、雇用保険料で約38,000円の負担はあるものの、約116万円の手取りとなります。
 これが106万円の壁の対象となると、厚生年金保険料、健康保険料など社会保険料を約16万3千円負担することになります。その分は社会保険料控除の対象となるので課税対象となる所得は小さくなりますが、そこから税金を差し引いた手取りは約102万円。これでは103万円の壁で働いている人と変わりません。130万未満の水準で調整していた時と同じくらいの手取りを得ようとするなら、年収160万円以上の働き方をする必要があります。

 つまり上記(2)のパターンで働いているパートタイマーは、今後以下のいずれかの選択をすることになるでしょう。

(1)-1

年収を103~106万円で調整して手取りを減らし、税金面では扶養をはずれても社会保険では加入対象とならず扶養となる。

(2)-2

年収160万円以上の働き方をして、扶養からはずれる。

3.働き方を考えるポイント

 今後の年金動向や寿命にもよりますが、社会保険料を負担すると自分の厚生年金を増やせるので、悪いことばかりではありません。また、扶養からはずれる覚悟をするのであれば年収160万円にこだわらず、さらなる収入アップも期待できます。

 一方、年収160万円以上の働き方を目指したくても、現在の勤務先の時給や、家庭との両立で難しい場合もあるでしょう。新たな勤務先を探す必要があるかもしれません。また、扶養をはずれると、配偶者の控除や会社の手当てがなくなり、その結果配偶者の手取り収入が大きく変わる可能性もあります。本人の手取りだけでなく、世帯収入全体を確認することが大切です。

 106万円の壁の適用要件にもあるように、当面は501名以上の企業に勤務している人が対象です。したがって年収103万円超130万円未満で働くすべての人が今すぐ適用されるわけではありませんが、国としては、女性が活躍するためにも適用の範囲を広げていきたい意向があります。働き方を変えるというのは家計にもライフプランにも大きな影響がありますので、すぐに対象とならない人も今後の働き方を検討するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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