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2015年12月号(1)
資産運用
ファイナンシャル・プランナー 平澤 朋樹

預金と保険だけを卒業。インフレに備えて始める資産運用

 「インフレに備えて資産を守っていかなければ時代になってきた。」そんな話を聞くことが多くなりました。しかし、なぜそうしなければいけないのか、どのように取り組めばいいのか、今まで預貯金と保険しか金融商品を持たなかった人が具体的な行動をイメージするのは簡単ではありません。

 インフレによる資産の目減りを防ぐには、インフレ率以上の運用益を得るしかありませんが、現金や低金利で固定された商品ではそれは望めません。インフレ率以上の運用益が期待できる、何らかの金融商品で運用することが必要になります。

インフレになると

 インフレになれば、相対的に現金の価値は下がります。現在は、原油価格の下落によってガソリンなどのエネルギー価格の低迷が物価上昇を抑えていますが、一方で食料品や日用雑貨などは値上がりしています。日銀が目標としているように、仮に毎年2%で物価が上がっていった場合、例えば10,000円で買えたモノ・サービスが、3年後には10,612円出さないと買えない、ということになります。あるいは10,000円の価値は3年後には9,423円に目減りしています。

 もちろんすべてのモノやサービスの価格が2%上がり続けるわけではありませんが、10年・20年・30年後を想定し、今から準備していくことが必要になってきています。ところが、多くの人は定期預金や財形貯蓄、あるいは貯蓄型の終身保険、個人年金保険や学資保険などに資産を振り向けています。

貯蓄型の保険と定期預金を組み合わせる

 定期預金は100万円預けてもたとえば0.1%未満などと、非常に低い利回りしか得られません。貯蓄型の保険がどうかというと、定期預金より高い利回りが得られますが、こちらも非常に低くなっています。仮に1%の物価上昇が続いた場合には、物価上昇を下回る利回りしか得られない場合が多く、インフレへの対応力は低いといえるでしょう。

 しかし一方で貯蓄型の保険商品は、解約しない限り元本が保証されています。元本保証の安心を得たいという場合、貯蓄型の保険だけで貯蓄をするのではなく、貯蓄型の保険の積立額を低く設定し、残りを1年物の定期預金に置いて様子を見るという方法があります。インフレが定着してくると定期預金の金利も上がっていくので、1年物の定期預金であれば比較的柔軟に預け替えて金利上昇のメリットを望めるでしょう。

長期的に分散投資

 ではインフレに耐えうる運用をする場合はどのように考えればよいのでしょうか。それは、国内外の複数の資産に分散しながら少額で積み立てていく投資です。もちろん元本保証はありませんが、長期間継続していくことで元本が減ってしまうリスクを抑えながら資産を増やしていくことが望めます。投資をする際に意識したいポイントは、コストと心理です。長期間、複利で運用していくため、わずかなコストの差が将来の資産形成に大きく影響を及ぼします。そしてもう一つ心理とは、投資経験の豊富な投資家でも先の見通しを予測することは困難なため、一時的な上下で一喜一憂しないようにするということです。それを回避するために有益な方法が、定時・定額で積み立てていくことです。その代表が確定拠出年金です。

 老後資金としての運用なら、まず考えたいのが確定拠出年金です。会社員なら、勤め先が導入していれば積極的に活用したいところです。勤め先が導入していない場合や自営業者などは、個人型の確定拠出年金を利用することができます。確定拠出年金は運用コストが低く、また税制上の優遇が大きいため、長期の資産形成に非常に大きなアドバンテージがあります。拠出額は全額所得控除で、譲渡益や分配金が非課税となるほか、受け取り時の課税も給与所得などと比べて非常に低い税率が適用されます。

 一方で確定拠出年金は老後資金であり、60歳まで解約できません。それより前の資金使途もあるでしょう。その場合でも運用コストを考慮したいところです。コストを低く抑える場合、販売手数料が0(ノーロード)で、信託報酬の安い投資信託や、ETFが挙げられます。投資信託は、ネット証券などを使って1,000円程度から始められ、自動積み立てもできるので、確定拠出年金と同じように定時・定額で買っていくことができます。ETFは株式と同じように売買する必要があり、自動積み立てはできませんが、コストが低く長期運用に向いています。

まとめ

 インフレによる資産の目減りに備えるには、元本確保を前提とした守りの金融商品だけでは難しい。長期資産形成は、ある程度リスクをとりながら積極的に資産運用をしていくことが必要になってきます。ただし、どのような金融商品をどのくらい、いつまで運用していくか、その選択もとても重要です。そのために、コストが低く、小額から始められる方法で、理解できる金融商品から始めてみると良いでしょう。

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